上杉祥三

「走り抜ける琵琶湖の霧が微笑い始める頃、僕は、5本の指の谷間に4本の指を流し込んで、祈りの鋳型を造ると残った小指で、永く永く君を想おう」
野田秀樹「宇宙蒸発」より)



野田さんのセリフを吐かせてこの人の右に出るものはいない、と私が未だに思っているひと。野田さんの戯曲ってセリフ回しがほんと独特で、脚本だけ読んでても全然「良さ」がわからないんですけど(私には)、舞台で見るととたんに全てが立ち上がってくる感じなんですよね。その中で核となるセリフを言い切るっていうのは、やはり独特な「何か」を役者さんも持ってないといけない気がするんです。この人にはそれがあった。少なくとも、あった時が存在していた、と私は信じたい。

お気に入り、としてあげておきながら、最近の上杉さんを見ていません。そんなヤツに上杉さんを語る資格ないのかもしれない。だけどどうしても名前を挙げたかった。ノスタルジィでもいい。愚痴でもいい。あなたの口からこぼれ出る言葉は信じられないぐらい私の胸を打ちました。その衝撃は今も忘れません。

マイベストアクト   「半神」先生