「農業少女」  NODA MAP番外公演

「これは、農業が東京を、偏に愛した物語である。」

今年度、ぶっちぎりのベスト1。これ。これなのよ。こういうものが観たくて芝居を観続けているのよ。どうしようもなく、切なく、切ない物語。百子を愛したヤマモト。東京を愛した農業。どちらの思いも届かない。叶わない。残されたものは、それでも、想うことをやめられない。百子はヤマモトを見ない振りをする。東京は農業を見ない振りをする。それでも、想うことをやめられない。

「ラン・フォー〜」の感想で引用した鴻上さんの言葉を借りるならば、この芝居は明らかに「演劇性」の高い芝居だと思います。だからこそ、万人に自信をもって勧められるかというと?マークがつくんだけれども、でも、はまると深いのは間違いなくこっち。意味がわかる、わからない、そんなことはどうでもいい。下敷きとなった物語を知っている、知らない、そんなこともどうでもいい。投げかけられた言葉を感じること、オレンジの光を浴びること、体中に沈み込んでゆくような音楽に耳を澄ますこと。たとえどれだけ知識があっても、本を読んでも、ビデオを見ても、体験しなければわからない、体験しない限り、本当のことはなにもわからない。この芝居は、そういう芝居でした。

演出の見事さはもう言わずもがなという感じでした。あの空間をあれだけ変化させられるって、野田さんっていったいナニモノよ。キャストも素晴らしかった。特に深津さん、百子というキャラクターにあれだけの説得力を持たせられたのはひとえに彼女の魅力のたまものだなぁと。野田さんはもう、やっぱうまいんだよーーー!!というか、当たり前だけど脚本を完璧に理解してるわけだからさ(笑)、細かいニュアンスとか伝えるのがほんとうまい。松尾さんも、明星さんも文句なし。それぞれの持ち味が出てて、流石でした。

「小劇場」って、劇場が小さいだけってことじゃないと思うなぁ、やっぱり。小さいことの意味って、やっぱりあると思う。なんていうか、お客がお客であることに責任持つっていうか、自覚的になるっていうか。自分も舞台を創っている要素の一つだというのが、ハッキリわかるよね。あそこまで濃い空気が流れると。だからホントに客の気持ちも舞台にまっすぐ向かっていたし、私も集中できた。こういう空間を味わえたのも、久々だったなぁ。

最後に一言。野田秀樹ってやっぱり天才。

大好きな作品。マイベスト深津絵里はこの作品かな。1回しかチケット取ってなかったんだけど矢も盾もたまらず2回見に行った。NODAMAPの番外って、やっぱいいよな〜!