「法界坊」  平成中村座

楽しい。とにかく楽しい。法界坊を演じる勘九郎さんが縦横無尽に、遊び心満載に舞台をつくっていらっしゃる、という感じ。結構な長丁場なので、最後の三幕目が大喜利というのは個人的にちょっとつらいものがあったんですが、それを差し引いても充分に楽しめました。

話の筋立て自体が、名家の没落と「鯉魚の一軸」という家宝をめぐる話なので、いまいち登場人物に感情移入しにくかったり、筋立てが飲み込みにくい気はするんですが、逆におくみをめぐる駆け引きや丁々発止なんかは、役者さんも楽しんでやってらっしゃっててすごく面白かったです。片岡亀蔵さんの佐賀右衛門の迫りようとかあまりにおかしすぎて、(本気かどうかはわかりませんが)舞台上で顔を隠して笑ってらっしゃる扇雀さんとか、私が見た日は橋之助さんがセリフを間違えて勘九郎さんに突っ込まれまくり、その後のシーンで立ち直ることが出来ずにへろへろだったりして、「いいのかなー」と思いながら爆笑してしまったり。しかし舞台でみんなが笑っていたのに全く動じなかった福助さんもすごい。

勘九郎さんの法界坊はとにかく表情から動きから、愛嬌があっておかしくてしょうがない。有名な「世界一低い宙乗り」も堪能させていただきました(笑)。ホントに低いよ、あれ!橋之助さんの甚三郎もすっごく男前で格好良かったんですが、要助を演じた福助さんのぼんぼんぶりもなかなか。抜けるような色白の優男で、勘九郎さんや笹野さんから「どうやったらそんなに白く塗れるんだ!」とか突っ込まれてましたが。芝のぶちゃんの野分姫も可愛かったなぁ。しかし個人的には弾けまくりの亀蔵さんが今回はかなりツボにはまりました。

平成中村座、これがお初だったんですが、小屋にはいるだけでわくわくしましたねえ。お大尽様を遠巻きに眺めたり、隣のお客さんとちょっと喋ってみたり。いつもだったら開演中のおしゃべりとか絶対許せないたちなんですが、なんかこの小屋だと少々の事は「アリ」かな〜と思えてしまう。不思議な空間だったなぁ。