「ア・ラ・カルト」

  • MIDシアター  Aブロック6番
  • 構成・演出 白井晃

思い起こせば十ン年前、ここMIDで遊機械の「僕の時間の深呼吸」を観て「ここの劇団は肌に合わない」と判断してしまい(今思えば風邪のせいだったかもしれない)、それ以来律儀にDMをくれ続ける遊機械さんに申し訳なさも感じつつ、次は見に行こう、ライフ・レッスンは見に行こう、ラ・ヴィータは見に行こう、食卓の木の下では見に行こう、そう思っている全てを最終的にはスルーし、もちろんアラカルトもずーっとスルーし続けて、ようやく今日、白井・高泉コンビにここMIDで再会したわけです。
・・・おっちゃんが悪かった(涙)
例によって例のごとくな文句で申し訳ないが、どうしてもっと早く見に来なかったのか・・・
いやいや、今回出会えただけでもよかった。その幸せをかみしめよう。しかしそれにしても・・・第一印象ってコワイねぇ・・・・

「ア・ラ・カルト」として上演される小さなエピソード一つ一つにユーモアとペーソスがふんだんに盛り込まれていて、本当に観ているうちに時間を忘れる思い。ヴァイオリンの音の心地よさ、音楽の心地よさ、そして何よりも「ア・ラ・カルト」だからこそ冴える役者の力量。めまぐるしく入れ替わるキャラクターそれぞれに魅力があってすごい。中でも「コーヒー」の老夫婦には脱帽ですよ。ついさっきまで13歳の女の子やってた高泉さんが・・・。もう、階段を降りてくるその姿だけで目頭が熱くなってしまい、ふたりのダンスでは号泣してしまいました。その後ひとり煙草を喫う陰山さんの存在感も○。セリフは一切ないけれど、人生を感じる背中でしたねえ。

「メランコリーの妙薬」って、確かブラッドベリにそんな短編あった気がするんだけど、最初と最後がメランコリーの妙薬を試しに来た女の子の話でループして終わる構成もすごく好き。「まだまだいけるぞ、って気分」と答える女の子の気持ちが観客の気持ちとぴったり合って、ううん、うますぎです!と感心しきり。SHOWTIMEも非常に楽しく(ペギー富岡万歳!)、本当に心底幸せな気持ちにさせてくれるひとときでした。どうもありがとう!

「こどものためのシェイクスピアシリーズ」と並んで、自分の不見識を恥じた舞台。ああ、本当にどうしてもっと早く見に来なかったんだろう。芝居を見続けている限りこういう思いはついて回るのだろうなあ。