「ゴロヴリョフ家の人々」

  • 新国立劇場小劇場  C6列16番
  • 脚本・演出  永井愛

帝政ロシアの時代の、大地主ゴロヴリョフ家の人々の強欲だったり甘えただったりする生き様とその顛末を救いなく書いた作品。ロシアでは著名な作者らしいですが、当然のように原作は未読。

意外なことに、というか、ポルフィーリーもアリーナもそんなに強欲!とか悪徳!とか思えなかったんだよねー。いやもちろん思う様ひどい事しているわけですがなぜか嫌悪感を感じるまでには至らないというか。強欲っていうか、このケチ!って感じなんだよなあ。なんかもっと、こすいというか。実際にはすごい財産家なんだろうけど、なんだか小市民ちっくに見えてしまって。相当に骨絡みで憎みあったりいがみ合ったりしてそうなのにあんまり骨肉の争い、という雰囲気がなかったっすね。もちろんだからこそこの重たい話を時には笑いも交えつつ見る事ができるわけで、その辺は永井さんの解釈がちゃんとこっちに伝わっているおかげかなと思いました。なんだかあの二人、最後哀れだし。それに彼らに踏みつけられた人たちもなんだか人のせいにしてばっかだもんねえ。そういう意味ではいわゆる「いいひと」は一人も出てこなかったな、この作品。そんな中で唯一きちんと自分の「目線」を持っているのが家政婦のパラーニャだと思うんですけれども、彼女が最後ポルフィーリーににかける言葉がこのお話の重いトーンを最後にちょっと救ってはくれるかな。

舞台装置も、テーブルや椅子やそういう「団らん」を感じさせるものがあるのに、暖かみが一切感じられないあたりもすごいなと。あと照明が本当に素晴らしかったです。あんまりスタッフワークに感動することってないんだけど、この照明はちょっと感動したなあ。

とりあえず足を運んだのは永井さん作だというのは勿論なんですが、浅野さんとそしてHRで絶妙なキレの有る芝居をしていた今井さんが気になってしょうがなかったからなんですけども。新劇関係にはうといので今井さんも今回が初見だったのですが、う・ま・い。うますぎる。突然だが好きです!と告白したくなるくらいツボにヒットしまくりました。い、今井さん次の舞台何!?っていうか何ですかあの声のよさ!あの滑舌!昨日の今日でなんだがこの人ならシェイクスピアでも見てみたいとか思ってしまったぞ。私の好きな色気タイプの役者さんではないんだけどとにかく存在感ありまくり。ポルフィーリー以外は結構皆さん出番が少ないので残念な部分もあったんですが、それぞれに味があってよかった。すまさん演じる父親のプーシキンの朗読はかなりぐっときました。加藤治子さんはさすがの貫禄、言うことなし、です。ハイ。