「ニュルンベルク裁判」 ひょうご舞台芸術

第二次世界大戦終結後のドイツ、ニュルンベルクで連合国による軍事法廷裁判が開かれたことは歴史の授業で聞いた覚えがあると思う。しかしこの舞台(原作)では、いわゆる国際軍事裁判ではなく、米軍政府主導の元に行われた「ニュルンベルク継続裁判」と呼ばれるもの、政府高官だけではなく実業家、銀行家、医師などが裁かれたその12の裁判の中から、国の法に基づいて正義を行ってきたはずの法律家を被告とした「法律家裁判」を取り上げています。

こういったテーマの舞台はどうしても舞台の良し悪し、出来不出来よりも観ている間に自分が感じた「自分の信条」的なものが強く印象に残ってしまいがちですね〜。この舞台を見ようと思ったのは昔昔私がまだ大学生だったとき、国際法を専攻していてゼミでこのテーマを取り上げたことがあったからというのと、単純に法廷ものが好きという理由(あと今井朋彦さんが観たかったから)なんですが・・・難しい、よね。って言うのはなんだか逃げのような気もするんだけど、昨日の敵は今日の友、じゃないけど昨日の正義は今日の悪、政治信条が、世相が変わると正義も変わるようなそんなやり方で人の罪を決める、ってことなんてやっぱりどうにも難しいでしょう。「私達は何も知らなかった」「彼が裁かれるのならドイツ全体が、国際世界全体が裁かれなければならない」と言った弁護人の主張には頷けない部分もあるものの、ではその正義の鉄槌であるはずの判決を下す人間はどうなんだ、と俯瞰で見てしまうとこれはもう堂々巡りな訳です。真実はひとつじゃないし、勝者も敗者もひとときのものでしかない。ああ、やっぱり、とてつもなくジレンマを抱えた問題だよなあ・・・。


という話はそこらへんにして、法廷ものが好きと書いたけど、それはさっきまで丸く見えていた筈のものが、「モノは言いよう」でその形がまったく違って見えてくるそのぞくぞく感が凄く好きなんですよねー。検察の主張を弁護側がどうひっくり返すか、っていう楽しみがあるので結構長い舞台だったけど不思議と飽きませんでした。暗転が若干多いのが少し気になったところ。舞台装置が素晴らしいので、それを生かした転換がもっとあっても良かったような。役者さんは、検察側の木下さんと弁護人の今井さんがおそらく一番良く喋ってると思うんだけど、木下さん、難しい法律用語がかなりあるので致し方ないかなとは思いつつ、若干噛んでたのが残念。でもすげー格好いいです。軍服姿が良くお似合い。声も良いしねーvそれにしても最前で久々に間近で木下さん拝見しましたが、顔が整いすぎてうさんくさく見えることってあるんだなあと褒めてるんだか失礼なんだがわかんないことをしみじみ感じてしまいました。今井さんさすがにうまかったなあ。もうちょっとまくし立てるような感じがあってもよかったかけど、でもあの早さであの滑舌の良さはスゴイね!口角の筋肉どうなってるんだ!とか訳の分からないことに感心してしまいました。あとベルトルト夫人をやった塩田朋子さんがすげええイイ声で、うーん女性では理想の声かもしれん!とか思っていたら吹き替えも良くやられる方のようで。思わず聞き惚れるほど良いお声でした。ヘイウッド判事役の中島しゅうさんが、最終陳述でしばし涙ぐまれていたのが非常に印象的でしたね。