「ダブル・アルバム」  月影十番勝負

  • MIDシアター  G列6番
  • 作 永井愛/演出 木野花

見に行く予定にはしていたんだけどうっかりぼんやりチケットを取るのを怠っていたので当日券で観劇。二人の女と一人の男の過去と現在の二つのアルバム、そして姉妹のそれぞれのアルバム。

肉親同士の骨絡みな言葉のやりとりを余すところなく描き出しながらも、重くなりすぎない永井脚本はいつもながらさすがだなあと。欲望という名の電車どころではない追いつめぶりが随所にみられますが、同時に滑稽さも感じられるところとか。しかし永井さんの本からは感じられる独特の愛嬌が体現できていたかというとちょっと疑問符かな。特に内田春菊さんは秋子というキャラの持ち味を生かし切っていない気がしたなあ。最後に大阪の修学旅行の話で泣き崩れるところ、ぎりぎり耐えてきたその思いがあふれ出す切迫感が感じられなかったし・・。終盤秋子と夏子が非常に激しいぶつかり合いを繰り広げるんだけど、高田さんの演じる夏子も春菊さんの秋子も、役作りが若いせいか台詞に生々しさが残りすぎた気がする。もう熟年、という感じの二人がやり合うシーンとすればお互いにもうちょっと枯れた感じも出て、「いい大人が何やってんだよ」的おかしさが客にもあっただろうと思うんだけど、なんだか本気で「うーわきっつー」ってな感じに終始してしまった感があって、ちょっと残念。

その点過去の二人の女を演じるシーンでは春菊さんの和代の憎めない感じもすごく良く出ていたし、きりりと和装を着こなした聖子さんの絹恵も素晴らしかった。特に泣きやむための「おまじない」を「私が教えたのに・・・!」と悔しさに打ち震えるシーンは出色。この芝居の中で私が一番印象に残っているのは、人民の歌を熱唱する和代をじっと見つめていた絹恵が「歌がお上手でいらっしゃるのね?」とクールに言い放ちバッ、と暗転になるところ。うーんいいねいいね、こういうの大好きです。あとこれは木野さんの趣味なのか永井さんの脚本の特徴なのか、ものすごく全般的にはウェルメイドなのに、時折小劇場ちっくな台詞回しや場面転換があったりして、そういうところも結構ツボでした。

舞台装置がなんだか中途半端に幕で仕切られていたのがなんでなのかいまいちわからず・・・なんで背面が全部隠れてないんだろ?とか。MIDの構造がちょっと変わってるからなのかなあ。