「しかたがない穴」AGAPE STORE 

  • シアタードラマシティ  12列26番
  • 脚本 倉持裕  演出 G2

大昔に陥没した巨大な縦穴の不思議な生態系を調査するために派遣された調査団。しかしそこにたどり着いたのは何の手違いか実際の調査とは関係ないカメラマンや通訳たちばかり。閉ざされた空間の中で彼らの言動はどんどんおかしな方向へとエスカレートしていく・・・。

自分の「穴」における存在意義を求めて右往左往し、やがては本末転倒になっていくさまは、なかなか私にとって現実味のあるホラーで非常に面白く見れました。穴に投げ込まれている木の実についての台詞、そして彼らの存在を唯一「有用なもの」にしてくれるはずの学者の存在が、そもそもあんたらに投げ込まれてる木の実なんだよ・・・と暗示するラストも良かった。というわけでこの脚本は、非常〜〜〜〜〜に好きです。ある種私の好きなテイストだけで創り上げたサイコホラーと言ってもいい。怖い、というよりは「なんかヤだ」という感覚が非常にマッチするなあと思いました。脚本を書いたのはペンギンプルペイルパイルズ(お、覚えられん・・・)の倉持裕さんで、劇団でのお仕事は未見ながら他の作品もちょっと見てみたいなあと思いましたね。

ただこれが脚本の問題なのか、演出の問題なのかわからないんだけど、折角種明かしを最後に用意しているんだからその謎はもっと活かした方がいいのかなと思った。最後のあのシーンでちょっと「なるほど!」って気持ちよさがないんだよなあ。もしくは5人の閉塞感をもっと煽って見せて欲しかったという気も。お膳立ても展開もいいと思うんだけど、山場がなんかなかったなあという印象。ないならないで、もっとほったらかしてくれてもいいし・・・。あと、演出はちょっと、もうちょっと工夫が欲しい。特にG2さんは場面転換の時の演出処理が常に同じで飽きちゃいます。

芝居の中で通訳である松尾さん(すいません実名で)と記者である秋本さん、医者の松永さんとカメラマンの山内さんが、それぞれ相対する構造になってるんですけども、ここはやはり松永さんと山内さんコンビが良かったなあ。「プロである(筈の)自分」に疑問符を投げかけられて最初はただの意地だったのが狂気にまで発展していく、という様子を描くには、最初の疑問符の投げかけ方に説得力がないとダメなわけで、その点この二人はいかにもいやらしく(笑)、相手の弱点を突いた芝居を見せてくれてよかったです。松尾さんと秋本さんにはそこがもう一つ欠けていた感じ。秋本さんに「○○」の切り返しをするシーンはクライマックスの一つだと思うんだけど、そこがどうにも決まらなかったなあ、と。松尾さんは中盤の狂気じみた感じもあってよかったですが、秋本さんは・・・もうちょっと頑張りましょう、かな。いやもうちょっと肩の力を抜こう、かな。もう少しキャラクターに陰影というか、強弱が出るといいんだけど。なんか強!強!ばっかりだったのが残念。

あと、出来れば開演前にパンフを買ってあらすじと作家による登場人物スケッチを読んでおくといいかもしんない、と言ってみる。でもパンフに「絶対見終わるまで読んじゃダメ」な部分もあるので、痛し痒しなんですが(笑)。