「レンズ」 KKP#4

  • シアタードラマシティ  9列12番
  • 作・演出 小林賢太郎

小林賢太郎プロデュースも4作目。今回は、椎名林檎さんの「百色眼鏡」(って、PVかと思ってたら、一応短編映画だったのね)の設定を頂いて、小林さんが書いた脚本。ちなみに百色眼鏡はワタシ見ていません。

イヤになるくらいに手堅く、「ちゃんと」面白い舞台。1時間半という素晴らしい上演時間で、図書館における本の消失という謎を解き明かすミステリーもとい、コントミステリー(笑)。元ネタのこともあって、もっとシビアな世界を描くのかと思いきや、笑い部分もかなりありましたね。どう考えても謎解きは主軸じゃないですな。ある本棚の本だけが消えるなんて、その本棚の裏に何かあるからだってすぐに思いつくだろう。それこそ「丸出し」である。一番脚本として苦しいなと思ったのはその点に登場人物がなかなか気がつかない点であった。でも相変わらず伏線のはり方、散りばめられたキーワードがきれいに拾われて行くところはさすが。理数系の脚本だなあと思います。オープニングの影絵の演出と舞台美術には今回ちょっと唸らされた。あの本が本物なのかどうかが気になるところですね。ラストの余韻というか、あのオチの付け方は今までのプロデュース公演の中で一番好きかもしれない。私の好きな終わり方(笑)。ラストの靴とか前払い云々の話は百色眼鏡に繋がるネタだそうである。なるほろー。

役者さんとしては、大森南朋さん以外はみなさまKKP常連ばかり。大森さんは実は結構気になっていた方だったので今回の舞台はこれ幸いという感じでした。不思議な味と佇まいだなあ。舞台役者としては濃さが足りないと思いますが、しかしそれが大森さんの味なのかもという気もする。それに他のメンバーが充分濃いからねえ・・・誰とは言わないが久ヶ沢さんとか・・・(笑)でもって、KKPで小林さんがこんなに出ずっぱりなのって初めてのような気がするんですが(あ、good day house見てないからわかんないけど)、小林さんてつくづく俳優じゃないなあと思った。とか言うと怒られそうなんだけど、いやもちろんうまいか上手くないかと言ったらうまいのだしむしろうますぎると言ってもいいと思う。だけど私の思う「役者」からはある意味遠いなあと。ある役に「なる」のが役者だとしたらね、小林さんのは「ある役がやるであろうことを正確に再現している」感じが強い。見た目の結果は同じでも途中の式は全然違う。今回一番俳優だなあと思ったのはやっぱり大森さんで、舞台役者だなあと思ったのは西田さんだった。西田さんは役である自分をキープしつつ、脱線しがちな空気をうまく引き戻していたりしてさすがでした。

小林賢太郎というのはそれにしてもイヤなオトコで(褒め言葉)、登場人物の名前、天城以外はみんな花の名前がついてるのね。天城は茎。これは椎名さんの曲にひっかけたものだろうけど、フライヤーのデザイン4種類に花と蟻が使われているわけですよ。他の4人が花だったら、天城が蟻ってことですわ。台詞でも言いますけどね。でもってこの台詞
「蟻は自分の何百倍もの荷物を運べる自覚がない」
くわああああーーーー、ぺっ!!!!
自覚ある癖に!
とちょっとやさぐれてみたくなった(なんで)。
自分で作・演出した舞台で自分の役にそんな台詞をあてはめるか。イヤなオトコだなあ(褒めてます)(ホントかよ)。

ちなみに脱線ついでですがラジオで小林さんが「ラーメンズのは作品、KKPは商品」と発言したらしい。どういう意図をもってこう言われたのか前後も聞いてないしわからないんですが、ファンの方の中には「ちょっとどうか」と思った方も居たようです。でもまあ私はいいんじゃないかと思う。というかいかなる表現もそれを表現たらしめているのは受け手であると私は思っているので、当人がどういう意図であろうがそんなことは関係ないのです。それに商品としてはそれはもう見事なクオリティであるわけでそれはそう簡単なことじゃないし一番大事なことでもあると思うわけですよ。もしかしたら「作品」を作る以上にね。この商品の破綻の無さに敬服しつつ、破綻しまくった商品のいびつな魅力というのもまた捨て難いわけで、そういうものも見てみたいなあ。なんて、ファンの贅沢かしら。