「真昼のビッチ」

いちばん近い町から路面電車で40分。うらぶれた町の真ん中に、彼女らはいる。嫉妬と因縁と逃れ得ぬ幸福から逃れてきて。今や呑み込まれようとしている町に縋る女達の物語です。

相変わらず、男はみんなバカである。バカで女の子に一生懸命だ。しかし今回は、女が手強いねえ。そういう意味では、舞台の上での男女のバランスがちょうどよくて良かった気がする。いつも凄く男カラーが強いのだが、さすがに今回は女どもの業の深さに男どもはただ沈むばかりという感じだ。個人的には前作「はたらくおとこ」がツボにヒットしまくりであったので今回はちょっと物足りなさも感じたりしたが、2時間半飽きずに見れたというのは面白く作ってあるってことだろうなあ。

「誰々のために、という言葉は、いついかなる時でも美しくない」。私の好きな言葉だ。誰かのせいにして生きる、ということは「誰々のために」という言葉に縋って生きるということだろう。でもね、みんな、普通に言ってるでしょ、毎日。「誰々のために」。そしてそれは度を超さなければ結構美しいことだとも捉えられているわけでしょ。私も含めてこの世に、一度でも、誰々のためにっていう大義名分に縋ったことのない人が居るのかね?この芝居にも誰々のためにという台詞は連呼されているが実にまったく誰も彼もが美しくない。その辺を突いてくるあたりは、長塚さんだなあとも思い、しかし身に覚えのありすぎることでもあるので、意外感はなかった。その辺が物足りなさを感じた原因かも。

見終わって改めて豪華なキャストだったなあと思ったが、観ている間は普通に阿佐スパを観ている気持ちになっていたのは、長塚さんの演出手腕なのかな。いっけいさん&じゅんさんのコンビも良かったし、小林高鹿さんは「なにもない穴」でもそうだったけどいやな役がとてもうまい。吉本菜穂子さんのふんわりした存在感もすごく効いてたなあ。そしてなにより女性陣4人、高橋由美子馬渕英里何千葉雅子・高田聖子が素晴らしかったですねえ。高橋さんの終盤の迫力、異様な狂気を感じさせる声は素晴らしかった。馬渕さんもなかなか難しい役所でしたがオープニングから引き込んでくれました。千葉さん、高田さんはねえ、言うことなし。二人のファイトは見応えあった。女同士ってつかみ合いすると、絶対髪の毛から行くよね。その辺のリアルさも素晴らしい(笑)さらにそこへ襲いかかる高橋さんの一喝は迫力においてもその言葉の意味においてもこの舞台のハイライトだったなあと思う。