大川興業のススメ

大川興業第29回本公演「SHOW THE BLACK」が、9月20日まで下北沢ザ・スズナリでやってます。その後神戸と名古屋で公演あり。
SHOW THE BLACKは去年の11月の大川本公演の再演で、「基本的に再演はしない」大川においては異例のサイクルでの再演となりました。なんと約1時間半、真っ暗闇の中で演じられる、音と気配だけの「無見劇」。去年の公演は下北スズナリだけだったので私は残念ながら見ることが出来ず、地団駄踏みましたよ。今年再演&地方遠征という決断を下して下さった大川総裁に感謝。以下は大川HPより転載。

昨年の大川興業第28回本公演「Show The BLACK」は、"一時間半真っ暗闇の舞台"、音と気配だけの世界の"無見劇"、として大成功のうちに終了した。人間は耳でも見ている。いや、皮膚で見ている。五感、六感を使って見ているというのがよくわかった。
(中略)役者もお客さんも互いに呼吸をし、時には戦い、連帯し、冷静に距離を置いたり、と不思議な舞台だった。多くのお客さんが途中で退席するかと思いきや、ほとんどいなくて、むしろ楽しんでいる人が圧倒的だった。これを見た外国の方からは、日本人は暗闇を恐怖と感じないのではないか、深夜12時からのお祭りがあったり、胎内くぐりがあったり、楽しみを感じているのではないかと言われた。
大川興業で再演はほとんどないが、より多くの人に舞台を感じてもらいたく再演を決めた。みんなも経験があると思うが、真っ暗な部屋の中で時計の音だけが気になったりすることがある。その日の精神状態で、眠れない人もいれば心地よいリズムになる人もいるし、音を耳が遮断している時もある。耳で見る舞台をみんなに見に来てほしい。(中略)今回も出演者は一切公開しないし、終わってからも公開しない。想像するところからこの舞台は始まり、終わってからも想像する舞台にしたい。
「Show The BLACK」
光はなくとも明るく闇を支配する。心の中に光をともせ。   作・演出 大川豊

さて、私は以前から大川を見に行くたびに思っていましたが、もっと芝居好きの人は大川興業の本公演を見に行くべきです。大川といえば思い出すのは古くはウィーン伝導こけし合唱団であり、江頭2:50のキワ芸であり、お笑いであり、借金であるかもしれないが、本公演の彼らは一味も二味も違うのです。何しろ、大川総裁は本気なのです。舞台、というものに本気なのだ。人の前で何かを見せる、ということに本気なんです。それはお笑いであれ、本公演であれ、変わらない。もちろん全然こなれていないところもあるし、全てが洗練されているとはとても言い難いが、しかしその辺の劇団やプロデュース公演でちゃらちゃらと「なんだかうまく見えるような芝居」をやっているやつらより全然噛みごたえがあるのです。

「無見劇」という今回の舞台、そのアイデア自体がまずすごいし、こういうことは「劇団」(では、ないかもしれないけど正確には)じゃないと出来ない試みだろうと思う。全く何も見えない舞台。じゃあ、人は何を見に行くのか?役者が見えなければ満足できないのか?それとも声が聞こえることが肝要なのか?それは究極には
「私は舞台というものに、何を求めるのか?」
という事であるのかもしれないとも思う。私はこの舞台を観て何を感じるか、全く想像がつかない。想像がつかないだけに、とてもわくわくしている。今年後半怒濤のように続く話題作の上演をさしおいて、実はこの「SHOW THE BLACK」が、私が今もっとも楽しみにしている舞台といっても過言ではないのです。

大川総裁の言葉をもう一度引く。「想像するところからこの舞台は始まり、終わってからも想像する舞台にしたい。」元来、舞台というのはそういうものであると思う。少なくとも、私はそういう舞台が好きだ。HPを見ると、東京公演は残りチケットも少なくなっているので、早めに確保に走った方が良いかもしれません。神戸はまだまだ大丈夫みたいなので、折角の遠征のチャンスを逃すのはあまりにもったいないですよ。
ちなみに、「真の暗闇」のなかで演じられるので、心臓の弱い人、暗闇が苦手な人はご遠慮下さい、ということです。ご注意を。