「夏祭浪花鑑」NY凱旋公演@千秋楽

千秋楽行って来ました。その前にも一回見てますので、計3回見たのか。すごいな、俺。
お芝居全体の感想とすると、3日の日に見たときが一番ぐっとくるものがあった。なんていうか、本当にピュアな舞台に仕上がっていたというか。先日見たときはちょっと砕けすぎたかな?と思うところもあって複雑だったり。それはそれで楽しいのでいいんだが、お客さんの前でやっていくと芝居って変わっていくなあとも実感した。

しかし、そんな中であらためて勘九郎さんの力に惚れたというか、やっぱすげえやこの人、と思いましたね。浮きがちになる舞台のネジをここで締める、と決めたとこで間違いなく締めてくれるんですよ。絶対外さない。団七の役では遊びすぎない、と決めてらっしゃるのか、すごくストイックなんだよなあ。回りがちょっと落ち着かない芝居になっていても勘九郎さんで必ず地に足が着くんだ。一回目に見たときは全体のバランスも絶妙だったので、勘九郎さんが特にすごい!という感じではなかったんだけど、後半2回の観劇ではああ、この舞台は勘九郎さんのものだと思った。しかしそれにしてもなんて届く芝居するんだろう。私最近この「届く」って表現がすごく好きでよく使うんだけど(元は古田さんの副音声)、まったくもう勘九郎さんの芝居は届きまくりだ。今までも同じ演出だったのか、まったく見ているようで見ていない観客で申し訳ないんだが、泥場のラスト、「おやじどの、許してくだんせ」と言うところで泥の中に向かって手を作って叫んでいることに前回初めて気がついた。んでまたそれで号泣ですわ。何回こちらを泣かせれば気が済むのか。よっ、中村屋

大阪凱旋公演バージョンは、背面が開かないかわりに鏡があって、それが逆しまの奥行きを見せていてけっこう面白いことになってた。ラスト、二人は外へは逃げられないので、降りてきたスクリーンに向かって二人が駆け込むとスクリーンの中に二人が現れる、という趣向。んでもってその二人がセントラルパークやタイムズスクエアなど、NYの街をあの格好のまま逃げ続けるわけです。BGMはシナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」。個人的には真っ青な芝生のなかを摩天楼に向かって駆けていく二人のショットが見れただけで初回はだだ泣きでございました。最後は二人が客席からスローモーションで現れ、あとはNY版と同じラスト。ただし今回は銃口が二人のほうを向いてましたけど。

さて、千秋楽!いつもはカーテンコールで橋之助さんが出て最後に勘九郎さんなんだけど、今日は二人が一緒に駆け込んできた、と思ったところで吹き上げの桜吹雪が!!!も、ものすっごい量の桜吹雪でした。ちゃんと花びらのかたちに切ってあるんだよ。ほんっっっっとに綺麗でねえ、なんかその花吹雪浴びてたらわけも分からず泣けて泣けて。もう大盛り上がりで拍手は鳴りやまないしもちろんスタオベだし(っていうかカーテンコールの前からスタオベだった)、一旦幕がしまったんだけどまたすぐ開いて、でキャストの皆様が客席中を練り歩き!花道ダッシュもしてくれて、私今日花横だったので色んな方とハイタッチさせていただきました。二階席・三階席にも行ってらしたと思う。笹野さんなんか二階席から身を乗り出してさっきの花吹雪を降らしてるし。ああ〜もうどっちを見たらいいの状態。もちろん串田さんも呼ばれて、最後は駆け戻ってくる二人のスローモーションを全員で(串田さん込み)やってみんながもうめちゃめちゃ幸せそうないい顔だった。でもまだ拍手がやまない(笑)スタッフの方も全員舞台に上がって、ニューヨーク・ニューヨークが結局3回?かかったのかな。おちゃらける方もあり、客席に手を振る方もあり。最後は勘九郎さん・橋之助さん・串田さんが舞台上で胴上げ。勘九郎さんと串田さんの抱擁にはほんと涙涙でした。死ぬほど手叩いたなあ。こんなに感謝の気持ちでカーテンコールの拍手を贈ったことないかも、ってぐらい、もうただ感謝の気持ちでいっぱいだった。

2002年に扇町でこの「夏祭」に出会ってから丸2年。その間に何回これ見たんだ。8回?正直自分でも信じられない。なんでこの演目にここまで惹かれ続けるのか。今日のカーテンコールで串田さんや勘九郎さんがスローモーションで舞台に帰ってきたのを見たとき、なんだかあの時扇町で駆けだしていった二人が世界ぐるっと回ってまた大阪に帰ってきたみたいだなあ、って思った。なんか、見届けた、って感じがした。しばらくはこの演目が再演されることもないような気がするけれど、でも今日の千秋楽で本当に「見届けた」って思えたので、個人的にはいいピリオド、いやピリオドじゃ困るな(笑)、コンマが打てた感じ?良い舞台と出会えて自分は幸せだったなあ、と本当にまた感謝の気持ちになりました。素晴らしい舞台を、どうもありがとうございました。またいつか、どこかで。