「イケニエの人」  大人計画

  • 厚生年金芸術ホール  1階F列33番
  • 作・演出 松尾スズキ

食物連鎖、ということに気を取られていたけれどもそういえば「ループ」してたのは食物だけじゃなかったなと帰り道突然気がついたりして。

ビリーとアメリが最後に二人の関係を悪いループや、っていう話をするところがあるんだけど、その二人もそうだしあの不入斗(全然関係ないけど今イリヤマズで一発変換で漢字が出てビックリした!)社長の成り上がりゲームもそうだし、乙骨さんの人生にしてもそうなんだよな。誰かに助けられる→恩義に感じる→恩人の為に違法行為→恩人を窮地に→自分も窮地に→誰かに助けられる、っていう。だから今回の話、なんだか突然ぶったぎられて終わったような感じあるけど、それは結局「そういうループの一部分」を今見たに過ぎないんだよってことなのかしらん。でもそうなると、ビリーの「仲直りが抜けてた」って台詞がなんか、気になるんですけどね。考えすぎでしょうか。

松尾さんと皆川さんの対面がある意味クライマックスで、劇中でもたがめちゃんと皆川さんの二人に結構芝居の背骨が託されていると思うんだけど、そこの二人の人生に「何があったか」で引っ張っていく力がちょっと弱いんだよなあ。回りが濃すぎるというのもあるけれども、なんというか芯が定まっていない印象になってしまって、それが集中力をいまいち高められなかった原因のようにも思う。演者の責任、だけではないと思うのだけど。

しかし今回一番感心したのは、まあなんというかうわーこのスター集団!みたいな役者の揃いっぷりであった。阿部・宮藤の二人は勿論なんですが、良々くんに宮崎吐夢さん、伊勢志摩さんに池津さん猫背さん、紙ちゃんに松尾さん。今この舞台にいる人たち以上に、どこを切ってもおいしく頂けます!みたいな劇団てあるだろうか。最初のシーンでずらーっと並んだのを見たときちょっと目の眩みそうな充実ぶりだなあと思った。そういう感覚ってちょっと久しぶりだったし。個人的に印象に残ってるのは吐夢さんの見事なエセ外国人ぷり、近藤公園さんのうさんくさ男前ぶり、猫背さんのどっちにでも感情無しでいける女、伊勢志摩さんの美熟女といったところかな。しかし何しろ後半さっと出てきて全てをかっさらっていく松尾さんが一番すごいと思った。