「真夜中の弥次さん喜多さん」 少年王者館KUDANproject

  • 精華小劇場  全席自由
  • 作・演出 天野天街

精華小劇場初、天野天街演出初、少年王者館KUDANproject初、というわけで初物尽くしの観劇。こいつは春から縁起がいいやな。

原作はしりあがり寿氏の傑作漫画。こちらは既読。ヤク中の喜多さんを更生させるために二人でお伊勢参りに旅立つという筋書き。でも彼らの旅は自分の内側へ内側へ入っていってしまうのだ。リアルと幻想、虚と実が入り乱れる世界。

最初はなかなかペースが掴めなかったのだが「ふりだしの畳」あたりから一気に呑み込まれました。うどんの出前を取るあたりは完全に作品世界にどっぷり。いやしかし、あのうどんのシーンは凄いよな・・・。最初は「こうだ」と思っていたものが一瞬あとにまったく正反対に見えてしまうなんて。写真のネガとポジが一瞬にして入れ替わるような不思議感覚。演劇って普段「見えてないものでも見えている」という大前提で観客はいるわけで、でもそれって実は結構異常な感覚なんだよなあ。「あの壁は?天井は?・・・見えてるんだ」
って言われたときドキッとした。

旅は死に、照明は塩梅に、塩梅は死を 埋め ま したに変わっていく。最後には二人そのものも消えてしまって終幕。ああ、なんか酔った。

舞台装置に小技が効いていて「あったりなかったり」する世界を見事具現化。小熊ヒデジさん、寺十吾さん、どちらも初見ですが作品世界にバッチリはまってもうこのひとたちしか考えられない。カーテンコールで一瞬暗転になって、何事もなかったかのように二人の立ち位置が逆になっていたりして最後にトドメのアッパー喰らったかのような感じで劇場を後にしました。その劇場が小学校の中だっていうのも、なんだかシュール。なんだかちっともリアルじゃねえやな。