映画「オペラ座の怪人」感想

もう上映も終わろうかという今頃になってやっと見てきましたよ。なかなか面白かった、けどもうちょっと映画としてのオリジナリティがあった方が良かった気がするなあ。ちょっと曲に頼りすぎの構成で、舞台ではある意味それを聴きに来ているからいいんだけど、映画では冗長になってしまうところが多々あった。以下箇条書き。

  • オークションの場面からシャンデリアが動いてモノクロのオペラ座が変わっていく場面はさすが映画、な感じ。ろうそくが点くシーンがとくに印象的かな。
  • THINK OF MEの場面はほとんど舞台を見ているかのようであった(ま、実際に舞台の上だしな)
  • PHANTOM OF THE OPERAのシーンは、断然舞台の方が好き。鏡の向こうに消えたクリスティーヌとファントムが、舟に乗って現れる・・・というのは舞台だからこそ感じられるスペクタクルなんだなと実感した。あんな具体的に道筋説明されてもなあ。それになんか地下水道がリアルにしょぼい。最後のクリスティーヌの高音、怪人のSING FOR ME!の声とかある意味最高の聴かせどころなのに画面が平凡でがっかり。
  • 私の大好きなナンバー、MUSIC OF THE NIGHTも、曲が最高なだけに聴かせよう聴かせようとして画面演出に凝らなさすぎだと思う。
  • PRIMA DONNAから、殺人のシーンに至るところは良かった。キャットウォークでの二人の攻防、不安感を煽る音楽に舞台上でのある意味牧歌的なバレエの絵。二つの物を同時に見せられるというのは映画の強みです。
  • ALL I ASK OF YOUも良かったなー。ふたりともすごくかわいい。個人的に今までラウルなんて名前も覚えられなかったほどだが(それ極端ですから)、映画ではあーかっこいい!と思うシーンが何度もあってさすがだなあと。
  • MASQUERADEは舞台も映画もどちらも好き!映画、最初は白黒金しか色の構成が無くて、えーなんか地味ーとか思ったんだけど、そのシンプルゴージャスな感じが最後の合唱で効いてくる感じ。舞台のおおおっ!!と思わず息をのむ埋まり具合も捨てがたいですけどね。
  • 墓場のシーンは映画ならでは。幻想的でキレイで良かったなあ。個人的に舞台版でここでファントムが出すしょっぼい火の玉が好きではないので、ラウルとガチ勝負、な展開大賛成です。
  • 賞賛の声が高かった前評判通り、POINT OF NO RETURNは映画の方が断然良い!クリスティーヌもファントムも気合い入ってる!見つめ合うふたりにただごとならぬ空気を感じて知らず涙を浮かべるラウル、なんてまさに映画でしか見れない場面構成。こういうのが見たかったのよ!
  • しかしその後の追跡行でラウルが水攻めであっぷあっぷ、なシーンは必要だったんでしょうか?歌の尺の関係?いらんスローモーションやなあと思わず毒を吐きそうになりました。
  • しかし舞台でも映画でも、オペラ座の怪人ラスト10分マジックは健在。いや、このマジックかかってるの私だけかもしれないですけど。怪人がふたりを解き放ってから、オルゴールのMASQUERADE、遠ざかるふたりのALL I ASK OF YOU、そしてMUSIC OF THE NIGHT。このコンボで確実に泣けます私。たまらん、せつなすぎて。

ところで、指輪と同じくこの映画も字幕問題が紛糾してるんですけど、歌の場面とか気がついたらあまり字幕を見ていなかったのでおおむねスルー、という感じでした。でも最後の最後、クリスティーヌがファントムにキスする場面で「私もあなたに惹かれていたことを」と出たのはちょっとマジでどうかと思った。あれがそういうキスじゃないことぐらい、舞台を2度も見たのに映画で初めてラウルとクリスティーヌが幼なじみだったことを知ったほどヒアリングの出来ない私でもわかるよ(喩えが長いですぴーとさん)。
多分ニュアンス的には「神さま私に勇気を下さい 彼が孤独ではないことを示す勇気を」みたいな感じだと思うんだけど。彼女がここでファントムにあげるキスは、生まれてから今まで、ファントムが一度も受けることの無かった、そして何よりも欲しいと思った「慈愛」のキス、「赦し」のキスであって「恋」のキスじゃない。ファントムはあのキスでもっとも大事なものを受け取り、欲しいと願ったものを失うんだ。だからこそのあの涙なわけじゃないですか。それを惹かれていたと言われてしまうと・・・そりゃ確かに惹かれる部分はあるわけだけど・・・そういう意味じゃない、と思わずツッコミモード。
指輪の時には吹き替えで見る、という選択肢もあったけどこの映画吹き替えないからね・・・(無理だしね・・・)DVDでは直って欲しいものです。
DVDと言えば日本語吹き替えはDVDにもつかないのだろうか。ある意味各国の最高のキャストでそれぞれ吹き替えつけたりしたらそれはそれで面白そうだと思うなり。日本版ファントムはやはり市村さんか山口さんなのかしら、その場合。

しかし、映画というメディアの力強さを実感させられる映画でもありました。ここまで有名な舞台といえど、「見たことある、ない」で言えば「ない」の方が圧倒的大多数になるんだよなあ、やっぱり。映画やテレビというメディアは一気にその裾野を十倍にも百倍にもしてしまいますよね。だからこその恐ろしさもあるわけだけど。BW、WEともにこの勢いでまだロングランは続きそうかしら。またロンドンで見てみたいなあという思いも実は少しあるんですが。