「時には父のない子のように」TEAM申

佐々木蔵之介さん久しぶりの舞台、しかも二人芝居、お相手佐藤隆太くん、作演がモダンスイマーズの蓬莱竜太氏、ということで「こりゃ見てえ!見たすぎるよ!」と地団駄踏んでいたら京都公演があって今泣いた烏がもう笑ったというような私でした。やっぱ、蔵さまのご出身が京都だからなのかな?ありがてえありがてえ。

とある有名なお笑い芸人の息子である兄弟。兄は父のあとを継ぎ売れないながらも芸人を目指し、弟は家出同然に飛び出した後東京でバンドをやっていて、父親の葬式にも帰ってこない。四十九日にひょっこり現れた弟と兄がお互いのことを語り出す。

この話のクライマックスは間違いなく、弟が背負ってきたリュックの中から夥しい数の「ネタ帳」が叩きつけられるところであって、それまでたった一冊しかない、と思われていたネタ帳をめぐる攻防や、亡くなった父親像がそのワンシーンでまったく違う顔を見せてくる、というのがすごい。だらだらと父親のことを語るよりも、あの夥しい数のネタ帳が何より彼らの父親を如実に伝えていると思う。

ビルの屋上というシュチュエーションですが、弟の方はその場所にとどまる必然性が実はないので、「引き留める」という作業がやっぱり多くなってしまうのが後半はちょっと気になったところではありました。あと、父親が弟に渡していたネタがとてつもなく高度なものだったと知った時に、それまで頑なに「芸人」に拘っていた兄が真に挫折するわけですが、あそこはもうちょっとくどくやっても良かったような気はします。父からのプレッシャーに恐れを感じて逃げた弟の気持ちは割と通ってるんだけど、兄の方は「憧憬」以外の父親への気持ちがあんまり伝わってこなかったからなあ。

ほぼ全編に渡って蔵之介さんが話を運び、ネタをし、舞台を背負わないといけないので(弟のほうは、極端に言えば関西弁で激昂するあの一瞬にすべてがかかってると言ってもいい)大変だろうなあと思いつつ、生真面目なのにどこかへなちょこ感満載な兄貴っぷりを硬軟自在に演じていてさすがです。怪獣な感じの蔵さま、ひさしぶりに見たかも。佐藤隆太くん、言いたいことをうまく言えないキャラが、佐藤くんの持つ一生懸命な感じとよく合ってた。ドラムのところ、へんにリアルで笑いました(笑)。