「壽初春大歌舞伎 昼の部」

  • 松竹座 左20番
  • 「義賢最期」

前半の、折平と待宵姫が恋仲なのに小万っていう実は女房、ってひとが現れて、みたいなトーンの話と、白旗の詮索に平家方の使者がやってくる辺りからの話とトーンが違いすぎて驚きました。白旗の話になってからの方がもちろん断然面白いわけですが。葵御前たちを逃がしたとき白旗がまだ手元に残っていて「わーん義賢白旗渡さなきゃ!」とどきどきしてしまうほどその辺りはのめりこんで観てましたね。
愛之助さんの義賢、声が渋くて好きだな〜と思いました。折平と待宵姫を逃がした後でそれを見送るシーンとか、どうも親の情とかそういうあたりは薄い感じがしましたけど、小万に白旗を託すところとかは気合い入っているなあというのがびしびし伝わってきてよかったです。

しかしあの立ち回りはすごいですね・・・戸板倒し、実際に観るのは2度目ですけど、何度観てもすごすぎる。最後の仏倒れも思わず息をのんじゃいましたよ。あれこそ本物の階段落ちだ・・・(違うし)。

いや、すごい筋だった・・・(笑)最初に筋書きをちゃんと読んでいてもびっくりした。「稲瀬川の場」はとにかく仁左衛門さん玉三郎さん、おふたりを堪能!という感じで、玉三郎さんはでてきただけで美しいし(花道でふわりと振り返るだけでため息が出ますわー)、仁左衛門さんの「しかし、待てよ」からの台詞はぞくぞくするほどかっこいい。かっこいいけど、しかしなんてダメ男なんでしょうか清心は!私はこんなダメ男見たことないよ!アサハカだし短慮だし情けないし意気地はないしまったくもう!だ。これ、仁左衛門さんがおやりになっているから「美男美女の悲恋」風味が前半漂ってるし、「一人殺すも千人殺すも」も色悪、ってな感じで素敵なんですけど、全部ダメ男の開き直り、ってな風味で観てみるのも面白いんじゃないかと思った。

というのも後半の白蓮本宅の場でのインパクトがすごすぎるからで、仁左衛門さんと玉三郎さんだともうなんていうか、そのあまりのギャップに「いったいふたりに何がー!」と思ってしまいましたよ私は・・・。でも伝法な口をきく玉さまもそれはそれで萌え萌えではあったんですけどね。とはいえ、やっぱり可愛さが残る感じではあり。

臍の緒書きから実は、に繋がるのはうん、これ前も見た!な展開ではありつつ、筋書きを読んでいても「なんでやねん」と突っ込んでしまう私です。しかしいちばん可哀想なのは求女ちゃんではないのか・・・これは十六夜、つーかおさよに自分の弟を殺したのは清心だってことがバレるとこも場面的にあるんだろうなあ。見たいような見たくないような、だ。求女ちゃん死に方も悲惨すぎるし!