「12人の優しい日本人」パルコプロデュース

  • シアタードラマシティ 17列16番
  • 作・演出 三谷幸喜

全般的にネタばれ警報発令中。

もともと裁判もの、法廷ものが大の好物なんですよ。「十二人の怒れる男たち」ももちろん大好きな映画だし、「12人の優しい日本人」も映画もちろん拝見しています。だから展開は知っているとはいえ、やはりよくできた作品だなあと思うし、言葉と言葉の応酬の中からいろいろな背景が立ち上がって見えてくるところなんてゾクゾクしますね。

登場人物はいかにも皆三谷さんらしい、というか、一癖も二癖もある人物ばかりで、無条件に好意を抱ける人間が殆ど出てこないんですよね。みんなそれぞれ最初は勝手なことばかり言っている。裁判に対してやる気はないし、自分の判断の根拠は曖昧だし、己の勝手な思い込みばかりを主張するし、ルールは守らないし。そういった「曖昧で、優柔不断な」日本人たちを相手に2号と9号が理論で説得する前半と、最も与し易しと見えた4号と10号が愚直なまでに無罪を主張し、そして11号が一気に反証していく後半。どちらも興奮させてもらいました。裁判ものを見ているときの、あの「くるぞ、くるぞ」って感じ。あれが好きなんですよ〜。

言葉というのは使いようだし、人を説得するには理論が必要。だけどそれだけではないんだってあたりも、「(十二人の怒れる男たち」では)ヘンリー・フォンダが格好良すぎる」といってこの作品を書いた三谷さんらしいなあと思います。

2号の生瀬さんと9号の小日向さん、このふたりさすがだったなあ。小日向さんの格好良さにはしびれまくりよ、もう。生瀬さんも最後の最後に頽れてしまう(無罪に投じることじゃなくて、「あんな女罰を受けて当然なんだ!」と言ってしまうところね)のがなんともいえずへなちょこでよかった。12号の山寺さんの「議論するってそういうことなんじゃないですか。あなたはただ、自分の意見を押しつけたいだけだ」ってところも印象的。4号の筒井さん、個人的にはマイベストアクト(笑)。いや、良かったよ!役に合ってるし、4号の台詞が全然嫌味じゃなく聞こえる(「僕のこと、よくわかってるなあと思って」とかね)のは彼ならではだよね。1号の浅野さんは、体育教師の身軽さもさりながら、やはり独白シーンの深さが素晴らしかったなと。11号の江口さん、後半になるにつれてどんどんよくなっていった感じがしました。初舞台如何でしたか?(笑)女性陣の中では、やっぱり10号の堀内さんかなー。昨年舞台で拝見したときとはまったく違う雰囲気で、それがまたハマッてるところが、振り幅の広い女優さんだなあ、と感心。

2時間で、このみっちりした世界を堪能。願わくば、陪審員もの、法廷ものの舞台がいっぱい増えると良いなーと思ってます。ちなみに私は裁判員に選ばれたら、喜び勇んで参加すると思いますが、皆様は如何でしょうか?