「12人の優しい日本人」千秋楽

行ってきました、千秋楽。通路にかつて見たことのないほどの補助席!すげえ!大丈夫か消防法!
1回目は劇場中ごろのセンターで見させていただいたのですが、今日は2列目の上手より。役者が下手奥に行ってしまうと見えないという難点もありましたが、この芝居はぐっと近い場所で見た方がのめり込めるなあと思ったところも多々ありました。TSB時代はトップス・・・でしたっけ?それぐらいのサイズでやるとかなり違う感想もあるのかもな、と。
芝居全体の出来としては1回目に見たときの方がスタンダード、という感じでよかったと思いましたが、千秋楽でも崩れるところはあまりなくて(まあ、演目上当然か)、よい楽日だったと思います。

三度目のカーテンコールで小日向さんに引っ張られ三谷さん登場。千秋楽には出ない、と仰っていただけに意外でした〜!びっくり。なんか、髪の毛をいつもみたいにピシッとしていなくてぽわぽわ頭の三谷さんでした。コメントはなく、劇中のシーンさながらに鈴木砂羽さんが客席をバックに記念写真。あと、山寺さんがビデオを回してました。

最後の畳み掛けるような11号の反証は確かに舞台ならではのものですが、それに実際に整合性があるかどうかということよりも「有罪であることは立証しなければならないけれども無罪であることを立証する必要はない=何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という大原則をうまく芝居の展開に活かしている三谷さんの手腕に唸らされます。

折角なので、各陪審員についての感想など。TSB時代のキャストも挙げてみた。私はTSBでこの演目を観ていないので、どんな風だったのか想像をふくらませつつ。

なんと言っても中盤、自身が無罪に投じ続ける理由を聞かれたときの独白が素晴らしい吸引力。落ち着いた貫禄みたいなものがあって、その辺「決を採るかどうかで決を採る」というようなことを言い出すタイプにはちょっと見えなかったところもありましたけども、「わかんないけどわかった!」というあたりは浅野さんのチャーミングさも相俟ってよい感じでした。個人的には柔軟体操よりも、ひらりと机を飛び越すときの身のこなしにうっとりです。TSB時代の1号は小原雅人さん(組!の加納さんだね)と三演目では甲本雅裕さんが演じられました。

いやはや、今日見てやっぱり生瀬さんすげえわ!と感慨も新た。最初から最後までこの舞台をかっちり支えてたのはこの人だな、と。何気ないシーンでも役に素晴らしい説得力があって観客を惹きつけますね。中盤、あまりの2号の説得力になんか自分が彼に説き伏せられてるような錯覚に陥ったり(幸福な誤解)。最後のシーンが、ほんといいんだわ・・・。最後に「言っちゃえよ!」っていうのが、ずっと彼に抵抗していた7号だっていうのもいいし、あの半泣きのような表情がたまらないっす。10号に上着を掛けてもらうところ、「うちのお隣りさんも」のところでちょっとだけ表情が緩むんだよなあ。隅から隅までお見事でした。ちなみにこの2号はTSB時代、映画、いずれも相島一之さんが演じられております。

  • 3号 伊藤正之

この12人の中でも、ポイントリリーフ的な役と先発型の役とあると思うんですが、3号はときどきふっと浮かび上がって存在感を示していくというリリーフ型の代表かなと。争いごとの嫌いな典型的な「優しい日本人」タイプがうまくはまってた。一言も喋らないと言っていた3号が終盤には熱心に議論に参加してしまうところ、好きでした。TSB時代は阿南健治さんと三演目で小林隆さん。うわあああ、目に浮かぶようだわああ(笑)

いやー良かったっす!!もう大絶賛!筒井くん、私結構舞台で拝見している方だと思うんですけど(筒井くんが出るから行こう、というのではなくて、行きたい舞台に行ったら筒井くんが出てる)、三谷さんは彼のキャラクターを活かすのがマジでうまい!ちょっと天然ボケ、なとこだけじゃなくて、小日向さんに「女性に向かって怒鳴るな!」というところとか、妙に男っぽい感じもすごくよく出てたんだよね〜。役的にもすごく好感の持てるキャラクターだったし、それを筒井くんがふくらまして見せてくれていたと思います。「俺は法律のことはよくわからないし論理的になんて喋れない。でも陪審員になって今ここにいる!」というとこ、ぐっときた。ちなみにTSBではこの4号は3号と入れ替わりで小林隆さん→阿南さんへ。

うーん・・・やはりちょっと厳しい。彼女の中ではちゃんと気持が繋がってんだろうし、不自然ではないんだけど・・・ここは押してほしい、という台詞でちゃんと伝えきれてない感じがある。もっと面白くなるのになあ、みたいな。対峙するのがこの中でも一二を争う実力者の小日向さんだっていうのもあるかもなあ。どうしても力の差が出てしまう感じ。ただ、テレビ中継を見てみると劇場での時より違和感を感じないのね。不思議なものだ。

この人も3号と同じくポイントリリーフ型の役なんだけど、短いやりとりでキャラを立てていってるナーと思った。「友達少ないんじゃないか」と2号に当てこすりながら、終盤自分が最も「友達いないやつ」になってるあたりもきっちり笑わせてくれていて○。この役は製作会見で堀部さんご自身が仰っていたように、初演では三谷さんご自身がやった役ですね(笑)そのあと、近藤芳正さんが引き継がれております。

うざい男やらせると右に出る者がいないね!(笑)このうざさは温水さんのうまさゆえなんだよなあ、と思いながらも「それにしても7号、うざい」と思わせてしまうところがもう・・・芸ですな(笑)中盤での自分語りも勝手極まりないんだけど、なんつーか妙に哀愁があって憎めませんでした。この7号は2号の相島さんと同じく、TSB時代の三演すべてと映画で梶原善さんが演じておられます。うざさではいい勝負かも!?

好きな女優さんなので、できればこちらを5号で見たかった・・・という気持もありつつ、でもこの7号と並んで憎めないキャラ作りはさすがだなあと感心しきり。彼女結局、終始人の意見に流されてるんですけどね(笑)実際にこういう人がいたら苦手なタイプだろうなあと思いつつも(たぶん12人の中で誰より苦手、7号よりも)、砂羽さんのチャーミングさで救われました。TSB時代には斎藤清子さんが8号を。うわー、善さんと斎藤さんのコンビは結構すごいかも(笑)

またもや大絶賛。そしてもう、全てがツボ。たまらん。大好き。カミソリ小日向万歳!9号をこひさんに振ってくれてありがとう三谷さん!9号だけスーツがね、ダブルなんですよ・・・あたしダブルのスーツ超好きなんですけどーーー!見た目も眼鏡も立ち居振る舞いも全てがはいご馳走様!という感じでした。朗々と自説を語るとこも好きだし、くっくっく、ってわる〜い笑い方するところも好きだし、ほんの小さな一言二言「相手にするな」とか「ここは君も折れろ」とか、そういうとこまでマジ完璧。今日の楽日はちょっと崩れかかったところがありましたけど、1回目見たときは本当に完璧だったですよ・・・。ごめん、生中継のビデオ、9号が有罪→無罪→有罪、となるところだけ繰り返し見てしまいそうな予感がするよ!そしてこの9号をTSBでは西村雅彦さんが・・・ああああ、見たかった・・・。

この間森山未来くんの恋人役をやっていたとは思えない、見事な「おばちゃん」ぶりがすごい。あの、目から鼻へあまりにも抜けない感!でも、その10号が評決をひっくり返す最初の一石を投じるところが、この作品の面白いところです。堀内さん、声も聞き取りやすいし「一生懸命なんだけど空回りしがち」なキャラ作りがちゃんと伝わってきていて思わず中盤応援したくなっちゃういじらしさがあってよかった。TSBではもちろん、宮地雅子さんがやっておられました。うーん、納得。

いや、文句なしカッコイイっす(笑)間近で見るとあれはクるね・・・。私の前の席の女性は、登場シーンで11号が上手の際に立ったとき、声を出したい!でも出しちゃいけない!という葛藤の末か、足で床を踏みならしてました・・・落ち着け!気持はわかるが!(笑)前半、結構「ヤなやつ」ぶりを発揮しなければいけないところはうまくはまってない感じがあったんですけど、後半怒濤の台詞量になってからの方が断然乗ってたね。ポイントポイントだけでうまく話に入っていくのは舞台独特の技量が要るのかもな、と思ったり。でも江口さん、何がいいって声がいい!!!舞台で聴いてすごくしっくりくる良い声してるよなあ〜。これをきっかけにまた舞台にも出て欲しいものでございます。しかし、TSBでこの11号を野仲功さんがやっていたというのがちょっとびっくりしました(笑)

声がいいっつったらこの人だよね、っていう。でも声がいいってだけじゃないのも嬉しい驚きでした。最後に2号に「あなたは結局自分の意見を押しつけたいだけだ」っていうところ、今日の楽日でちょっと客が意図しない方向に笑いそうになってたんだけど、うまく間を取ってきちっと締めていたのがすごかったなー。そのあとの「・・・違う?」っていう呼びかけが今日はちょっとやさしくて、おお、そういう言い方もありか!と思ったり。大阪公演は終演後、山寺さんのアナウンスが入っても拍手が止まなかったので(2回ともそうでした)、良い声のアナウンスが聞き取れなかったのが心残り。この12号、キャラクター的にもすごく好きで、伊藤俊人さんがやっていたと知ってなんだか納得。