飛び入りレポ

勘三郎&染五郎、舞台乱入合戦 歌舞伎で初の試み

歌舞伎俳優・中村勘三郎(50)と市川染五郎(33)が20日、東京・渋谷で上演中の互いの舞台に、そのままの役で飛び入り出演した。歌舞伎では初の試み。
勘三郎は、染五郎が出演しているパルコ劇場の「PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場」に、染五郎勘三郎出演のシアターコクーンコクーン歌舞伎 東海道四谷怪談」に乱入。
佐藤与茂七(勘三郎)と中山安兵衛(染五郎)がともに四十七士ということで実現した。勘三郎は「シャレですから。渋谷でこういうことができるいい時代になった」。染五郎は「歌舞伎が渋谷を制した瞬間ということでしょうか。歌舞伎万歳」と喜んだ。勘三郎はふん装のまま、車でコクーンからパルコに移動し、息子の中村勘太郎(24)と共演した。

というわけで、幸運にもこの飛び入り出演を目撃することが出来ました。折角なので、ちょこっとメモ程度ですがレポを書いてみます。芝居そのものの感想も書いていないのになんなんですが、正直もうこの2演目についてはまともに感想書けそうもない(笑)

パンフでも「自分が出る場所がわかった」と言っていた話が披露されていますが、その書いてあるとおり、右京の「助太刀の助太刀をいたす!」で「あいやしばらく!」と声がかかって勘三郎さんのご登場。場内のやんややんやの大歓声。拍手がいつまでも消えなくて、台詞を喋っているのになかなか聞き取れないぐらいの盛り上がりっぷり。ちなみに客席通路からのご登場でしたが、カメラがあとを追いかけて来ていました。どこかで放送されるのかしらん。
勘三郎さんは、東海道四谷怪談、蛇山庵室の場の佐藤与茂七のお姿でのご登場。「これが一番助太刀らしいだろ?」とのこと。客席から舞台へ上がろうとするのを、亀治郎さんや染五郎さんが「わーーー!ダメ!そこから先はダメ!ここ僕らの陣地だから!」と制す。それでもあがろうとする勘三郎さん、あの、研辰で三津五郎さんが辰次の仕掛けを踏むのか、踏まないのかでやっていたような思わせぶりな仕草を繰り返してました。そこで染さまたちから「あなたは一体誰ですか」みたいな台詞がかかると、長屋の連中がここぞとばかりに「そうだそうだ」「いきなりやってきて」とはやし立て、ひときわ大きい声で勘太郎くんが「あんた誰なんだよ!」とタイミング良く聞こえるように言うものだからまた場内爆笑。勘三郎さんにきっと睨まれて染さまの後ろに隠れる勘太郎くんカワユス。

そういえば堀部の爺さま役で出ているとき、勘太郎くんが言っている「恥をかけ。ワシも親父によく言われた・・・。恥をかいて一人前になるんだ、ってほんとうるせえんだあいつ」というセリフを受けて、染さまが「あわわ」みたいなリアクションをしてくれるのだが、この日は舞台袖をいつまでものぞき込むリアクションをなさっておられました(笑)

助太刀の助太刀の助太刀を断られて帰ろうとする勘三郎さん。そこで今度は染さまたちから「しばらくしばらく」と声がかかり、「渡すものがある」と。何かと思えば、「折角いらっしゃったので、三谷氏からサインのプレゼントが」とパンフに「勘三郎さんへ 三谷幸喜」とデカデカと書かれたものが手渡されておりました。客席を引っ込む途中、通路側に座っていた宮藤官九郎さんをめざとく見つけ「どうもどうも」とご挨拶。そして舞台上の染さまに向かって宮藤さんの肩を叩きながら、「いつか歌舞伎、書いてもらおうな!」と仰ってました。長屋の連中も手を振ってお見送り。染さまがここで「じゃああとでねーーー」と可愛らしく仰ったのがこの後の乱入のことだと全然思っていなかった私。鈍すぎ。

パルコの終演が9時半ごろかと思われるのですが、本当にもう、終わって即!駆けつけたんだと思います・・・終演10時チョイ過ぎだったしね。もしかしたら楽屋番の話のところで、扇雀さんがNY公演の話をしたのとか、時間稼ぎだったりしたのかしらどうなのかしら。ともかく、本水を使った捕手と伊右衛門の立ち回りがあって、与茂七が舞台奥から登場、紙吹雪というのか紙落としというのか、ケレン味たっぷりの演出の中、突然
パパパパパパパパパパパパパルコ歌舞伎見参!
の音楽が聞こえてきて、舞台奥を下手から上手へ中山安兵衛が駆け抜ける!
・・・え、それだけ?(笑)
しばらく舞台上で、橋之助さんと勘三郎さんが「どこだどこだ」「どこへ行った」というもなかなか姿を現さない。勘三郎さんは足の裏に釘が刺さった小芝居までやっていた(笑)とすると、今度は客席から「喧嘩買います」の旗印を持った染さまが登場!
「助太刀に参った!」
の台詞に場内割れんばかりの大歓声!それを受けて勘三郎さん、「さっきは私の助太刀を断ったくせに」と笑いを取りつつ「しかし私は心が広い!」でまた場内拍手。
「助太刀頼んだ!」
で、世にも不思議な(笑)、佐藤与茂七、民谷伊右衛門、中山安兵衛という三人の立ち回りが!紙吹雪の中、スローモーションで立ち会ったり、水の中で見得をきったり、染さまと橋之助さんが刀を合わせたまま、舞台奥から「行くぞ〜〜〜〜〜」みたいな超!いたずらっ子の顔をしてざっばーーーーん!と飛び込んだり、もうすごいことになってました。水に濡れた安兵衛もまた格好いいんだわこれが!

最後は三人が舞台上に並んで「今日はこれぎり」。そのままカーテンコールに突入し、後ろへ下がろうとする染さまを勘三郎さんが逃がさない(笑)。串田和美さんも舞台に上がられ、染さまを「12年前の直助権兵衛です」とご紹介。客席にいらした三谷さんにも拍手を送り、「パルコ歌舞伎はもう終わりですからコクーン歌舞伎にいらして下さい!」と勘三郎さんが言うと、染五郎さんが「まだです!まだ!26日までやってます!」と応酬。

いやいや、それにしても貴重な体験をさせていただきました。面白かったし、楽しかったし、興奮したのはもちろんなんですが、なんだか胸がほっこり暖かくなるような役者たちの「絆」をちょっと感じたりして、本当にいいもの見させて頂いたなって思います。

「渋谷で歌舞伎」のサプライズイベント、堪能させて頂きました!!!