「MYTH」

やー、スズカツさんだったなああ!と、誰しもが思うであろう感想を私も抱きました。パンフ読むと、当初はそういう予定ではなかったみたいなんだけど、どんどん「変わらない」スズカツさん節が頭をもたげてきたらしい。

LYNX」からスズカツさんに入った私としてはもちろん好きなトーンの世界であり、ホームグラウンドともいうべき青山円形を見事に使いこなす演出ぶりもツボだったんですが、手法は確かに変わらないんだけど手法が変わらないからこそ、スズカツさんも「変わったなあ」と思う部分もあった。閉じてしまうことより、開かれていくことの方により興味があるのかなあというか。

最後の扉が閉じられていく照明がものすごく印象的なのだが、その中に誰も残っていない、というのは今のスズカツさんらしさを表しているような気もする。

中山さん演じる「友人」が実在しないというのはもう登場シーンから明らかなわけですが、LYNXとあえて比較するとエンドウとオガワが創り出す密な空気がこのふたりにはまだないのね。それが役者の問題なのかどうなのかはわからないけれども、そこが前半ちょっと引っ張っていく力が弱いよなあと思わされたところ。

しかし後半、一旦「死んだ」ケンタロウが起きあがって、壊れたレコードのようにさっきの台詞を繰り返すところの中山さんはお見事。1回目に言ったときとトーンを殆ど変えていないのだが、その変えてなさが余計異様に映るんだ。普段着の顔に狂気を隠れさせたら右に出る者いないよなーホント。

篠井さんが出てくると途端に舞台上が異様なテンションで埋まるというか、緊張感が全然違ってそこは舌を巻きますな。

スズカツさんの描く「父と子」が思った以上にウェットなものだったというのも驚きでした。1万円50万円ピノキオ、デティールの活かし方がうまい。ピノキオああもってくるとはなー。でも、ちょっと直球すぎたような気もする。

パンフで冗談なのか三部作的な話をしていたけど、是非やっていただきたいな!と期待しております。「孤独三部作」、いいじゃないか!