「Cat in the Red Boots」新感線NEXUS

※若干ネタバレ気味です。

もうトウのたった(初っぱなから失礼です)劇団員ではとてもこっぱずかしくてできないジュブナイルな物語を若い役者達のパワーを借りてやってみよう!な「NEXUSシリーズ」。パンフによれば「犬夜叉」から続く系譜のようです。

前半がどうにもつらい。劇団ならではの小ネタもたくさんあって、役者個々の面白さもあって笑えない訳じゃ決してないんだが、肝心の物語の方にのめり込んでいけない。「巻き込まれ型主人公」なんだけど、巻き込み力がどうにも弱いんですなあ。魔法のブーツと人間になりたかった猫、自分の「物語」探し、とネタはそろっているんだろうけど、元ネタがある話だというのもあって当然先は読める(お姫様とくっつく、という先じゃなくてだよ)わけで、それはそれでいいけどじゃあもうちょっと障害レベルを高くしてくれないと、と思ってしまうんですけど。

で、その障害レベルを一気に高くしてくれる人物が現れる後半はだから非常に面白かった。勧善懲悪なものがたりでは善が善であるだけじゃ足りないのよねん。
ま、その人物を演じているのが他ならぬ「梶原善」さんなわけですけども。いやーすばらしかったね!今回もいい仕事してるわ〜。アカドクロ以来新感線とのご縁続きですけど、いいことだ、いいことですよ!すばらしいのは圧倒的に「悪」でありながら、愛されるキャラクターな部分もちゃんと両立させているところ。私はもうすっかり竜王さまの虜でございます!「ファスナーおろすのもだるい〜」とか最高。カナコさんのラプンツェルも悪党ではあるんだけどやっぱりどうにも「小悪党」だし、善さんの竜王はラスボス感満載でありながら、その実後半誰よりも笑いをもっていくあたりがねえ、ほんとさすが。
主演の生田斗真くん、スサノオ以来ですが、声もよく出てるし立ち回りとかの動きがすごく綺麗。舞台が小さいから間合いが近くて大変だろうね。キャラとしては、父親の紡ぐ物語に憧れるある種夢見がちな男の子が、現実と向き合って大事なものに気づく、というところなんだろうけどやっぱりこれも前半が弱い感じがしましたなあ。巻き込む張本人の松本まりかさん、声、確かにかわいい。でも舞台で「いい声」って思うのとはまた別なのよね・・・でもって、あの歌はあれでいいんでしょうか?しっとり聞かせるところでずっこけそうになったんですけど・・・別にむりくり歌わせなくても良かったんじゃ?河野さんはひさびさに我が意を得たり、なキャラでよかったですな。魔法学校のダメ三人組もいいトリオ。実はメタルマクベスのとき中谷さんの演技が非常にうざく、どうしてくれようかと思ったほどでしたが今回はすばらしくはまってましたね。キャラによるんだなあ。粟根さんは袖のひらひらをひらひらさせすぎ(笑)

それからもうひとつ。
初日あけて二日目の観劇となったわけですけども、あの不手際の多さはなんだ!と言いたい。これは声を大にして言いたい。ひどくないか?ドアは開かないし、閉まらなきゃならないところで閉まらないし、セットに引っかかって回り舞台が回らないし、スタッフの「戻せ!戻せ!」って声が2階まで聞こえてくるし、舞台中なんども「がたん!」とか「ばたん!」って大きな音が舞台裏から聞こえてくるし、もういい加減にしろと。いのうえさんはパンフの中で「プロの学芸会をお見せします」と言っているけど、確かにこれは学芸会レベルだわ。ただし、アマチュアの。役者はトラブルにもめげずよくやっていたよ。頑張ってフォローしていたし。
舞台は生ものだからとか、変わっていくものだからとか、人間のやることだから間違いはあるとか、それはもちろんその通りだしだからこそのハプニング、その対処、そういったものも確かに舞台の魅力のひとつでしょうよ。でもそれを創り手が大義名分よろしくふりかざしてどうする。なんか新感線は昔から初日と楽では別物、みたいなことが当たり前のように言われているけど、それは「初日は初日で作品としてはひとまず仕上がっている」ことが大前提なんじゃないか?その上で「進化していく」のが舞台なんじゃないか?初日はゲネレベル、中盤ぐらいで金の取れるレベルになりますってのとは違うだろう。安くないチケット代をとっているのだから、せめて「ちゃんとお客さんに手渡せるもの」を初日にしあげて当然だと思うのですが。