「みんな昔はリーだった」

*若干ねたばれ気味です。

うまいタイトルだなあとまず感心。リーというのはもちろん「ブルース・リー」のことで、男の子なら誰もが皆ブルース・リーに憧れた時代の、ちょっとくすぐったい青春の群像劇、という感じ。中学生なんてもういつの時代に済ませたんですか、というような方々が繰り広げる青春絵巻ではあるけれども、そういうことは気にならないのが演劇のすばらしいところですね(笑)

中盤の、転校生に対するいじめのシーンが、まあ後藤さんだから当然なのかもしれないけどまったく手抜きなく作っているので、なんつーか、見ていて辛い気持ちにはなった、正直。だから「これはちょっと安易な展開だとかなり後味悪く終わってしまうのでは・・・」と思ったし、これまた後藤さんだけに全然ダークに転がるってのも強ちナシとは言い切れないのでそういう意味でも目が離せない展開だったんだけど、オーソドックスに転がりつつも転校生が仲間に入るところとか違和感なく受け入れられたのでよかったです。

また転校して去っていく彼を見送るシーンとかが、絶妙なユーモアに溢れていていて、ギリギリくさくなりすぎないところとかがさすがだなあ、と。

伊藤正之さんが語り手で、非常に耳に心地よく、話にすっと入っていけたなあ。成志さん、顔面技も含めていろいろ卑怯なのだが、なにが一番卑怯って転校していってしまうだめゆきにお煎餅を送ってあげる、というところだ!「届かないと思うよ、郵便とか、結構いい加減だっていうし」「届くまで何回でも送っちゃるけん」←これ!これをさりげなく言うんだわ!台詞に反して、トーンにまったく熱さがないの。そこが逆にすごいぐっとくるんですよ!なんて卑怯なの・・・!(歯ぎしり)。あと、新聞記事を持ってきたミャオに「だめゆきは関係ないっちゃろ?」というとこもすごいふつーなの、ふつーだから、余計胸が痛むんだってばさあああ!ほんと、90パーふざけてんじゃないのかって感じなのに、決めるところは決める男だよ、成志さんは。

竹下さんも、今回の役はハマってたなあ。ほりけんはなんか天衣無縫すぎて演技なのか素なのかわかんないっていう感じだった。ある意味すごい(笑)

大作とか力作といったような力の入った感じはないけれども、ちょっとほのぼの、うるうる、うわーー!な感情が楽しめる作品に仕上がっていたのではないかなあと思います。