「宝塚BOYS」

若干ばれあり。

かつて宝塚に男子部があった!という実話を基にした作品。戦後すぐから8年間の彼らの甘く苦しい戦いの日々を描いています。

パンフで裕美さんも仰っている様に、今現在、宝塚に男子はいない、という現実を観客みんなが知っているわけで、それはつまり結末はどうやってもわかっている、ということでもある。結末がわかっているがゆえに、男子部の結成からその戦いの途中を描いている1幕は見ながら若干身の置き所がない感じになってしまうのですが、二幕になってからの構成、畳み掛けが半端ない。最終的にはものすごく晴れ晴れとした気持ちで劇場を出て行ける作品に仕上がっていました。

崩壊を感じさせる種をあちこちに撒きながら、それを最後の15分ぐらいで一気に見せていく構成はほんとすごい。飛び出そうとするもの、望まない通知、深夜の稽古場、そして最後通牒。これがほんとに最後に一気にくる。彼らの夢は完膚なきまでに叩き潰されたかのように見える。だからこそ、そのあとに続くレビューシーンの楽しさと素晴らしさに拍手を送らないではいられない。楽しくて、きれいで、ちょっとマヌケで、でも最高かっこいい。あの羽を背負った彼らが最後に客席に向かって手を振るときのあの笑顔!値千金ってああいうことをいうんだと思う。

それぞれのキャストによさがあって、みんなちゃんとその舞台の上で本当に生きている感じ、彼らの中にちゃんと繋がりが見えてくるようでそのあたりはほんと裕美さんさすがだなあと思う。しかし中でも、吉野圭吾さんのダンスはあの最後のレビューシーンの根っこを支えていて素晴らしかった。ひとりでも、ちゃんと「踊れる」ひとを持ってきたのは大きい。その吉野さんの後ろで、わっちゃわっちゃと一生懸命手を振り足を上げているみんなもキュートだったなあ。柳家花緑さんのダンスが意外に(といっては失礼か)しなやかで、血かな・・・*1と思ったり。三宅さん、結構いい役所で、最後の稽古場のシーンは泣かされっぱなし。あとあの突き抜けた笑顔ね!最高。そして唯一の女性役で元宝塚スターの初風さんが出ていらっしゃるわけですが、ほんと、一声で空気を変えるあの力ってなんなんだろう。宝塚おそるべし。

女はすごい、かなわないよという台詞があるんですけど、でもそれは逆も言えることで、深夜の大合唱、酒飲んでクダ巻いてそんな切ない姿さえどこかカッコいい、なんていうのはやっぱ女が憧れても憧れても手に入れられないものだよなと思ったり。女もつらいけど男もつらいのよ、友達になれたらいいのに、あきらめたくないの泣きたくなるけれど、ってなんかこれずっぱまりだなあ(笑)

*1:花緑さんのお兄さんはあの小林十市