「失われた時間を求めて」阿佐ヶ谷スパイダース

  • ベニサン・ピット D列10番
  • 作・演出 長塚圭史

いつもとは居心地の違う阿佐スパ。しかし個人的にはきらいじゃないです。これを3時間やられたら苦痛ですが(笑)、1時間40分なら集中してみていられる。
「動物園物語」がモチーフとして語られる場面がけっこうあって、そういえばそのベンチひとつというセットもまさに動物園物語なのだった。鈴木勝秀さんがパルコダブルスタンダードシリーズとかいって裕美ねえの「おーい救けてくれ!」と二本立てでやったとき見たんですよね。光石研田中哲司のコンビだった。

抽象的、暗喩的な物言いばかりをする中山さん演じる男のせりふが、最終場には「なにを言っているのかわかる」ようになってくるあたり面白かったです。

しかし、こういった物語の力に頼らない作品を少人数で創り上げるには、食い足りないところも多かったなあと思いました。物語という枠があればね、観客は役者のせりふを受け取るのが比較的ラクなんですよ。でもこの芝居の、特に前半、抽象的な言葉の応酬が続くシーンとかは、役者のほうにもう少し「信じて、言い切る」力がないと、言葉がすべっていくような感じになるんだよなあ。そういう意味ではですね、奥菜恵さんに一番その思い切りがあったかもと思う。

セットすばらしかったなあ〜!ベニサンて面白い劇場ですね。あれ舞台にそうとう奥行きがあるんですね。なんとなく、雛壇な椅子席のない、青山円形みたいな感じを勝手に想像していたんですけど、変形でいろいろ作れたりもするのかな。憧れのベニサンを初体験できてテンションあがりました(笑)