「五右衛門ロック」新感線

観てきた観てきた!盛り上がった盛り上がった!いのうえひでのり@コマ、合わないわけがないだろうと思ってはいたがずっぱまりだった。惜しい、もっと早くいのうえさんとコマが出会っていれば・・・!*1

以下ねたばれてます!

何度も話を蒸し返すようで申し訳ないのだが、去年の8月、この同じコマ劇場でこれ以上ないというぐらいひどい演出を見せられたので、いのうえさんの手腕の確かさに心底感服。あれ、何気ないように作ってるけど、相当よく考えられてる。芝居はほとんどがあの中央の半円をぎりぎりまで使っているので、どの席からでも芝居がよく見えるし、左右花道の上に黒御簾(中にバンドの方々)、その左右の花道を使った芝居もちゃんとあるし、客席通路を含めた前後の動きもきっちり押さえてる。モブシーンではガヤのみなさんがちゃんと半円に大きく広がってくれて左右の客にも目配りを忘れないし、なにより一番感心したのはあのコマといえばこれ、というバースデーケーキのような回り舞台。あれをいのうえさんが使わないわけないと思っていたのだが、がっちりセット組んじゃってて1幕ではまったく使わないし、あれえ〜と思っていたのだった。そしたら、最後の最後、ここしかない!というところでキター!ってなもんである。すごい、すごいよいのうえさん。

キャラ的にはルパン三世、物語的にはスサノオの「魔性の剣」を髣髴とさせる構造。わかりやすい勧善懲悪ではないので、古田が小ボス→中ボス→大ボス、と倒していくような気持ちよさ、カタルシスには欠けるところもあるのだが、しかしそれを補ってあまりあるあの口上の異常ともいえる気持ちよさはすごい。あれってなんなんでしょうかね。日本人は元からああいう名乗りが好きなのかな。本家白浪五人男でもあの名乗りは見せ場中の見せ場ですが、なんというか血が沸騰する感じとでもいいましょうかね。無条件に興奮した。しかもこの、ここぞ!というときの古田新太のかっこよさったら!!!!あの一瞬ですべてをもってくよ!!!!

構造が入り組んでいるところもあるので脚本的に説明に時間を費やしてしまっている部分もあるのですが、しかし二幕の、幕切れにむかう30分の濃度にそのすべてをチャラにできる、というかそれがあるからこそのこの盛り上がりとでもいいますか。

中島さんの好きな「まつろわぬもの」がまたしても物語の中に登場してまして、あーここで話が停滞するなあと最初は思ったんですが、あの江口さんの「拙者幸せ」は本当に本当にいいシーンだし、歌も王道J-POP、さわやかギターロックで楽しいし、そのあとの親子の対決から一気に血生臭さを増していく、その前のシーンとのギャップがすごく効いてるなーと思った。いやでも、あのシーンの江口さんはほんとうにいいよ!

森山未來くんは、いやもう、YOUができる子だってのは知ってたけど!っていう。知ってたけど、改めて惚れ直すよ!みたいな。やっぱり踊ってほしいよねー未来くんにはさ。今回は「苦悩の王子」色が前面に出ていたのでメタマクのときのようなお馬鹿はっちゃけぶりはあまりなかったですけど、こんどはぜひおポンチにも出てもらいたい!と熱望します。あのマントを着ての立ち回り、相当難易度高いと思うんですけど、あの美しい体のキレと身のこなしで乙女の視線をクギヅケ☆っていうね。

それと今回、何気にうれしかったのが「じゅんvs粟根」の構図!!いやっほう。この二人と、それぞれの配下になっている前田vs川原の構図もふんだんにあって、っていうか粟根さんがこんな立ち回り多いの久しぶりじゃね?そんで、じゅんさんと立ち回りしながら割り台詞言い合うって構図、なんか「ロストセブン」以来じゃね?的な興奮に打ち震えました。聖子さんは一幕はガヤで、二幕では「過去ある女」として出てきますが、松雪さんとのガチ場面で、それまで3枚目風に、いってみたら松雪さんに「花をもたせ」ているかのようだったテンションが、昔の名を呼ばれてたったひとこと「・・・なんのこと」と返すその一言で、舞台での力の流れを一気に自分に持ってくるあたり、いやあうまいうまい。

江口さんは短い台詞で掛け合うシーンでは、どうしても古田に圧倒的なうまさがあるなあという感じなんだけれど、長台詞のほうがしっくりいくし、客席をひきつけておく力があるよなあと思います。自分のペースでもっていくほうが得意なのかな。でも、これだけ立て続けに舞台の仕事を入れてくれているっていうのは、舞台が気に入ってくれたのかなあと思うとうれしいですね。それにさっきも書いたけれど、あの歌のシーンはほんとにすごくよかった!!北大路さんの役は、単純な悪を体現すればいいというものではないわけで、しかもこの物語の複雑さを観客に納得させなければいけない役だったと思うんですが、なんつーか、説得力が違うわ。舞台が締まるってこういうことか、と。

そしてカーテンコール、その御大北大路欣也を差し置いて最後に登場する古田新太。まったく見事な千両役者っぷり!腹は相変わらず太いけど、やっぱりあんたが大将だぜ!この男についていったら間違いないって思わせてくれますね。

ほんとにこの芝居のラスト30分の盛り上がりは異常、そういって差し支えないわけですが、これはもう否が応にも高揚しないではいられないし、なんだったらそのまま歌舞伎町のど真ん中で愛ならぬ五右衛門ロックを叫びたくなってしまう罠。大阪公演の前楽を見る予定ですが、真剣に大千秋楽のチケットを探し始めてしまっている件(笑)まさにザッツエンタテイメント、これぞ新感線!!!

*1:コマは今年で閉館