「仮名手本忠臣蔵 Bプロ」平成中村座

上演されたのは五段目六段目七段目、そして十一段目。このうち五,六段目は見たことあるので初見は七段目と十一段目です。Bプロを選んだのはスケジュール的に都合が良かったってのもありますが、この仮名手本忠臣蔵の五,六段目を以前勘太郎七之助コンビで見て(浅草で)、それでその直後に仁左衛門さんと玉三郎さんの「おかる勘平」を見たんですよね。そのとき、当たり前なんだけど一軍と二軍ぐらい違って見えて、じゃあ勘三郎さんの勘平ってのも見てみたいなと思ったのが理由の一つです。

でもそのときは、七段目はなくって、だから五六七を通してみたのは今回が初めてなんですけど、七段目を通してみるのと見ないのとって全然違うのね。あの、六段目ってこういう言い方しちゃうとあれですけどすごく陰々滅々としちゃうじゃないですか。ああっ、もう、誤解なのに!なんで!っていうフラストレーションもたまるしさ。六段目のさいごに、勘平が血判に加えてもらうところが唯一の救いと言えば救いなんだけど、それは六段目では「救い」としてはぴんとこないんす。くるのはね、七段目なんです。七段目の、由良之助が九太夫をとらえていう台詞、あそこで一気にカタルシスがくるのな。いやなんつーかもう、ほんとによくできてる。場面としても華やか、かつ筋立ても面白くて、よく上演されるというのも頷ける。

十一段目は討ち入り。テレビドラマとかでいえばクライマックスにあたるんだろうけど、気分的には七段目のほうが圧倒的に面白いですよね。でもあの陣太鼓と雪を見ると「うむ、やっぱり忠臣蔵だな!」という妙な満足感が。七之助くんと勘太郎くんの泉水での立ち回りは見事でした。

今回の通し狂言4プロ、どれだけがんばってもふたつで(日程的にも金銭的にも)ギリです!というところだったので仁左衛門さん入魂の「加古川本蔵編」であるCプロとこのBプロをチョイスしたのですが、そしてどちらも相当に満足したのですが、しかし見れなかった二つにも思いが残ってしまうのが芝居ヲタの欲深さ。たとえばAプロなら私がまだ見ていない四段目の、塩冶判官@勘三郎さん、大星@仁左衛門さんという鉄板の組み合わせによる「判官切腹」を見逃したのが痛恨だし(四段目のあらすじ読んで二人の芝居を想像しただけで昇天する)、Dプロでいえば各方面で絶賛の嵐だった勘太郎くんの勘平を見逃したのもさることながら、判人源六を勘三郎さん、不破を仁左衛門さんというこれどんな大御馳走?な組み合わせを逃したのがマジ痛い。つーか不破数右衛門仁左衛門さんがやるのなんて、もうないだろうな・・・しくしく(泣)