「蜉蝣峠」新感線

とりあえずばれナシ感想を先に。なるほど、「壊-punk-」というだけあっていつのも中島脚本とは雰囲気違うかも。特に前半はネタもの?と思うような台詞やシーンもあり。でもネタもののように「くだらないことに血道をあげている感」はないので、あくまでも枠組みの中でのお遊びが多いという感じ。映像を多用する演出のせいもあるかもしれないが、なんとなくIZOとかぶる印象がありますね。端々で遊んではいますが、基本重いです。

いまいちがっつりのめり込んで見てしまうキャラ設定が個人的にいなかったので、感情が揺さぶられる!という感じではなく。ACTの結構奥行きある舞台をほぼ素舞台にしてのラストの立ち回りは見応えあります。ってあれ、どこまでがネタバレじゃないんだろうな。以下隠します。
前半は謎のばらまき、後半それを回収、というテイなのでカタルシスはもちろん後半にあるわけですが、全編通して集中して見られるし、面白くないわけじゃないんですけど、なんというかドラマティックな部分に欠けるような気がしました。ドライなんすよね、皆。どこか乾いてるんですよ。そこが中島さんのホンと一番違うなと思ったところで(これはIZOの脚本を書いた青木さんにも言えることかもしれないが)、どっちが良い悪いということじゃなくて、中島さんのホンはやっぱどこか「泣き」があるんですよ。言っちゃえば演歌的な。そのホンがいのうえさんの乾いた感じとちょうどいい化学反応を起こすところが、私としては「新感線的気持ちよさ」の要因であるので、そういう部分ではどうしても薄い。

あと宮藤さん独特の飄々とした中にネタを挟んでいく台詞回しがなかなかしっくりいってないところもあるのかなあと。ここらあたりは客前で回数やるごとにこなれていきそうですが、現時点でそれを完全にモノにしているのは勝地くんだけではないでしょうか。

闇太郎の「死なねえ、いや死ねねえ」って言葉の意味は?とか天晴の目的は結局、なあに?とか一揆の首謀者にして・・・とかいう伏線は、どこ?とかいろいろ疑問点も残るのですけど、まあねえ、先にも書きましたが、これはACTをほとんど素に戻しての堤vs古田の一騎打ち、ここが見られればまあ大抵のことは水に流して良いのかな、と思うほどいいですね。文句なし。堤さんの大きくて華やかな殺陣と古田の重くて力のある殺陣。これが縦横無尽に入り乱れるんだから見惚れないわけないっつー。つーかどっちを見ればいいんだよ状態(二人だけで戦う前に雑魚を片付けているシーンも結構長くあるので)。しかし古田さんはどんな間合いでも見せるなあ。感服するよ。

ちなみに堤さん、悪役だ!とか言われてましたけど悪役か、あれ?ああいうの悪役とは言わんと思う。まー長髪着流し、ふくらはぎ太もも見せまくり、赤ふんチラ見せしまくりの大サービス。おまけに着ぐるみまで。文句なしのかっこよさじゃないかよオイ。古田さんはコレ結構精神的にしんどい役かもね。最後の殺陣ぐらいしか発散するところなさそうです。シリアス口説きモードの古田さんが見られるっていうのはありそうでなかったかもなーと神社のシーンを見ていて思いました。でも個人的に古田の色気ってああいう風に必死に口説き落とすんじゃなくて、むしろ女に奉仕させてるぐらいの方がエロくて好きなんですけど、ってこれは私の完全なる好みでしたスイマセン。

勝地くんは犬顔でもいい仕事師っぷりでしたけど、今回もいい!宮藤さんの脚本との相性もいいし、前半の立役者ですよ間違いなく。新感線組はこのあともうちょっとエンジンかけていって欲しい感じかな−。このあとほぼ2ヶ月後の大阪前楽を拝見する予定なので、ある意味使用前使用後となるのか、という楽しみが(笑)