10周年おめでとう

to 俺。

ユリイカ!という、私がやっているホームページが本日めでたく10周年を迎えました。ありがとう、ありがとう。感無量です、と言いたいところだけど本当に感無量なのかいまいち自分でもよくわからない。10年かあ、とぼんやり思うというだけのことのような気もするのですが、でも10年って10年経たないと10年にならないわけで、そう思うとやっぱり感無量のような気もする。

昔は自分の芝居の感想もなにもかも、つまりここでやっているようなつぶやきはすべて自分の日記と舞台感想のページと、そしてBBSで繰り広げていたわけですが、blogという簡単かつ便利なツールが現れて、結局のところいろんなところにいろんな呟きが分散して、ホームページとしてのテイを為してないじゃないか、と言われてしまうと返す言葉もないんですけれど。

ただひとつだけ、10年間私が「続けている」と胸を張って言えること、それは、自分が観た芝居、すべての感想を必ず書くということです。もし自分がホームページを「やめた」というときは、それができなくなった時だと思う。短くても長くても、絶賛でも毒舌でも、とにかく必ず、何かを書く。そんなことに意味なんかない、と言われてしまえばそれまでですが、でも少なくとも私は10年前、自分のホームページを立ち上げるときにそれだけは決めていました。全部の芝居の感想を書くこと、いい悪いは関係なく。もし10年続けてこれたことの秘訣があるとしたら、その自分で決めた「背骨」がホームページを始めるうえで決まっていたからなんじゃないかと思います。

つまりそれは、私がこの10年、エンゲキ、というものへの興味を喪わずにきたということでもあるわけです。いい芝居を観たい、観たことのないものを観たい、そう思う情熱を喪わずにいられるということ、それは本当に幸福なことだと思うようになりました。私を芝居の世界に引きずり込んだのは第三舞台でした。1988年9月6日近鉄小劇場、天使は瞳を閉じて。そのあと、野田さんに突き落とされ、鈴木裕美さんに足を引っかけられ、いのうえさんに転ばされ、数多の演劇人たちの落とし穴にはまりながらここまできました。数え切れないぐらいの幸福な体験をさせてもらったなと思います。

演劇は面白いです。芝居は素敵です。毎日同じことをやっていても同じものが二度とないその一回性、生の人間のやることだから何が起こるかわからないスリル、どれだけの狂騒のあとでも最後には何も残らない潔さ、どこを観ても誰を観てもかまわない自由さ、本物の嘘を本気でつくことのドラマ、どれだけ離れていても表情までもがはっきりわかると錯覚させる力、役者の声でゆれる空気、光が作る世界、飛び交う言葉、役者の呼吸、わたしの呼吸。

そしてその代償のように、つまらない芝居は死ぬほどつまらない。もしかしたら私たちはみんな筋金入りのギャンブラーなのかもね。だって、海のものとも山のものともわからないものに、これだけの情熱とお金をかけて劇場に通い続けるんだもの。その情熱がすべて屑籠行き同然になるかもしれないことを承知の上で。そして私は今のところ、そのギャンブルから足を洗う気はどうやらないようなのですよ。

次の10年はどんな10年になるのかな。また何か新しくすきになるものと出会えてたらいいなあ。でもって、おなじみさんたちにはおなじみさんたちでがんがんノックアウトされたいなあ。やっぱり好き好きやっぱり好き、そんなことばっかり言っていたいな。でもってそのたびにウダウダとしょうもない文章を綴って気を済ませて満足したいな。いい10年だった!だから、きっとこの先も、いい10年であるといい。それが私の、贅沢な願い事です。