「十二月大歌舞伎 昼の部」

  • 操り三番叟

以外にも勘太郎くん初役であったのか!というね。どこかでやっているような気もしていたんですが、いややはり勘太郎くんの踊りは良い、というのを再々再認識いたしました。見ていて気持ちがすっきりするというか、あの美しい手の所作、軽やかな動き、なめらかさ、あっという間の一幕でした。三番叟といえば、何年か前亀治郎さんと染五郎さんが寿式三番叟を新橋演舞場でやられていたんですけど、あれがほんとよかったんで、いつか亀治郎さんとのコンビかなにかで勘太郎くんもやってくれないかなあなどと思ったり。

  • 野崎村

お光を福助さん、お染を孝太郎さん。福助さんってあまりお光のような役を見る機会が少ないので新鮮でした。これなー、私が勘太郎くんに本格的にハマったのってこの野崎村のお光を勘太郎くんがやってるのを観たときからなんだよなー。この「嬉しかったもたった半時」のお光のいじらしさってちょっとたまらんものがある。

  • 身替座禅

定番の演目とはいえ、やはり観ていて楽しい一幕。コンビによって印象が変わったりする部分もありますよね。三津五郎さんと勘三郎さんのコンビは息もさすがにあっていて、よりコメディ色が強くなる印象。以前右京を仁左衛門さんがやられたのを観たんですが、その時のモテモテ亭主っぷりったらハンパなかった(笑)

  • 大江戸りびんぐでっど

宮藤官九郎さんの作による完全新作。楽しくなかったわけではないですが、ゾンビという題材がとかなんとかいうよりも物語として弱いような感じがしてしまったかなあと。「はけん」という時事ネタを入れ込んでいるんですがそれが実際どこにも結実していないような。染五郎さんと七之助さん夫婦、そして勘三郎さんの3人をめぐるドラマに焦点を当てたほうがぐっときたかも。というのはあのお堂でのシーンがとてもよかったので(背景も良かった)、黒と思っていたものが白に変わる、その展開の鮮やかさはさすが宮藤さんだなあと思ったんですけど。それにしても梨園きってのゾンビ好きと名高い亀蔵さんは要所要所で確実にもっていってましたよねえ、ほんと大好きだこの人(笑)

完全なる新作をかける難しさ、というのは渡辺えり子さんの時にも痛感したんですが、なんていうかどうしても足し算の演出になりがちなような気がするんですよね。もちろんこのトゥーマッチな感じこそが宮藤さんのやりたかったことだ!といわれてしまうとだったらしょうがないなあって話なんですが、脚色という点では余人の及ばぬ手腕を発揮する宮藤さんなので、またこういう機会があれば今度はそういう方面でのチャレンジも観てみたいと思いました。