おいしいってこと

小説 中華そば「江ぐち」 (新潮OH!文庫)

小説 中華そば「江ぐち」 (新潮OH!文庫)

三鷹の中華そば屋「江ぐち」が今月末で閉店するというニュースをコメント欄で教えて頂いた。何度かここでも書いたことがあるような気がするけど、私はこの「江ぐち」という店を、久住昌之さんのこの本で知った。それを知ったきっかけは青木るえかさんのエッセイだった。
久住さんの書かれる「江ぐち」があまりにも魅力的で、そしてその対象との距離の取り方や文庫版につけられた「あとがき」の文章に惚れ込んで、そうなると思うのは「一度『江ぐち』でラーメンを食べてみたい」ってことだった。
あれ何年前だったかなあ、7、8年前になるだろうか。意を決して三鷹まででかけて「初・江ぐち」を果たしたんだった。私はまったくラーメン通といわれるような人種ではないし、ラーメンを食べるときでもこってりした味の方をより好むんだけど、でもひとりで緊張しながら座ったカウンターで、おそらくは常連さんと思われるひとたちの中で食べたあっさりスープのラーメンはとても美味しかった。ほんとラーメンっていうより「中華そば」という感じがした。席をひとつ挟んだ右隣の男性が、ラーメンをひとつ食べきった後、替え玉ではなく普通に「ラーメンもう一つ」と注文していて、そして店のおっちゃんもそれを完全に日常茶飯なテンションで受け止めていたので、私は顔には出さずにびっくりした。江ぐちに行ってきたよ!という話をその時泊めてもらっていた友人に話したら「自分も行きたい!」と猛烈にアピールされ、結局1日おいてもう1回行ったのだった。それがわたしの江ぐち体験。

久住さんのこの本は、どんなことでも面白がりようによってはすごく面白い、ということを体現していて、その久住さんの江ぐちへの汲めども尽きぬ愛情と関心は、なんというかこんな私にも共感せずにはいられない、と思ってしまうところがある。

とても面白いからみんな読んで・・・と書こうと思ったら、これ文庫ももう絶版なんですね。しかもマーケットプレイスの値段が・・・!(白目)いやでもね、これはこの本を買った人が皆「ハイ読んだ、ハイさいなら」って手放したりしてないってことだとおもうよ。

というわけで本を手に入れるのはすこし難しいかもだけど(図書館って手はあるよね!)、久住さんがご自身のblogで「江ぐち」に行かれた話を書いていらっしゃるのでそちらを是非。あの本のトーンそのまんまだ。なんだか懐かしい。

クスミの後悔日記 http://mqusumi.exblog.jp/9730391/