遠き道を征く

この間twitterで「今までの観劇に費やした時間とお金」の話になっていやもう確実に一財産築けるね、ってことになったんだが、実際私の今のこの遠征人生のきっかけを作ったのもそもそも芝居だった。というわけで唐突に自分的遠征史のなかでエポック的な出来事を振り返ってみるなど。

大阪から東京へ、人生初の「遠征」。大学1年生でした。これに行かない、という選択肢は当時の自分にはあり得なかった。まあよくぞチケットが取れたなって話ですけどこのチケ獲得にまつわる紆余曲折を書いてるとそれだけで日が暮れるので略すとして、ともあれ何事も最初のハードルを越すまでが大変なことは間違いなく、このきっかけがなかったら「わざわざ何かを見るためにどこかに出かけていく」ということへの敷居はもっと高くなっていたかもしれません。逆に言うと今低すぎ(笑)

当時住んでいた東京から長崎へ。91年以降、芝居がらみでは年1〜2回の東京遠征というのは続いていたんですが、ライヴの遠征はこれが初めてでした。しかもなんで東京からっていう(笑)ちょうど転勤したばかりで、4月5月は完全にスケジュールが立てられなかったんですね。それで6月ぐらいならまあ落ち着いているだろうと。しかしこの日のライヴは思い出深い。翌日早朝に長崎駅前の郵便局が開くのを待ってFC入会の振込をしたというのは自分の中で伝説(笑)

  • 1999年 NBA UTAH JAZZ vs SEATTLE SUPERSONICS @DELTA CENTER

いきなり海外(笑)当時ユタ・ジャズに在籍していたジョン・ストックトンという選手が大好きで大好きで、とにかく一度、彼のプレイを実際に観てみたい、という欲求が抑えられなかった。ユタで2戦、シアトルに移動して1戦観たのかな。当たり前だけどこんなパッケージツアーないですから、ホテルも試合のチケットも何もかもすべて自分で手配。熱心なユタファンのサイトのBBSでいろいろ教えて頂いたなあ。インターネットがなかったら絶対に出来ないことでした。もちろん一人旅です。でもこれ以降、ただの観光で海外、というのが食い足りなくてしょうがなくなってくるあたり、遠征の魔力というのはおそろしい!

RIJFは初フェス遠征でした。大雨、台風、土砂降り。なんという苦行(笑)しかしまだ参加者もすくなかったため勝田駅前のホテルがらくらく取れた。なんにせよまだフェス、というものが根付く前の良くも悪くも牧歌的な時代でした。でもって「阿修羅」がなぜエポックな遠征なのかというと、今まで遠征、というのは「そこに行かなきゃ観られない」から行くものだったんですよ。大阪公演がないから東京まで行く、というような。でもこの阿修羅城は先に大阪公演があったんです。そして自分、それを見てるんです。なのになぜ新橋まで行ったのか。それは「新橋演舞場で観たかったから」という理由。新感線は、というか古田新太はそのずいぶん前から「新橋でやるのが夢」ということを言っていて、だったらその夢の叶うところを見に行こうじゃありませんか、と。しかしこれ以来新感線は「東京・大阪両方観る」ってのがなんとなくデフォってるようでこわい・・・しかしもっとこわいのはこの二つの遠征が2週間も開かずに行われていることです。松竹座で阿修羅千秋楽を観た翌朝飛行機で関空→羽田、そしてひたちなかへ。そして1週置いてまた次の週末大阪→東京を移動して新感線を見に行っているという・・・(余談ですがその1週間後にはメキシコに旅行してました・・・)あの頃君は若かった、いや、馬鹿だった!

  • 2003年 「Lord of the Rings:Return of the King」@WARD 16 THEATRE,Honolulu

再び海外。今まで数え切れないほどの遠征をやってきた中でもきわめてばかばかしい、というか完全に周囲をどん引きさせた遠征ですね。何って映画を見に行ったんです。ロード・オブ・ザ・リングの第3部を見に行ったんです。ハワイまで。日本でも公開するのに、何故!?って話ですが日本公開は全米公開に遅れること2ヶ月、12/17が全米公開初日だったこの映画の日本公開は翌年の2月中旬。
「待てん。」
というのが私の結論でした(待てよ)。LotRにハマるあまりなんという馬鹿なことをしでかしているのか。しかも(ここ重要)英語もわからないのに!いや、でもこの映画にはまっていた3年間が私の英語力のピークだったと思いますね。好きこそものの上手なれとはよくいったものだ。この遠征時のどたばたについては自分の指輪日記のこことかこことかこことかにかなりうだうだ書いていて、自分で言うのもなんですけど、ちょっとオモロイです(笑)

さらに海外。もうこの辺になると「遠征海外旅行」の魅力にとりつかれてるので普通の観光旅行じゃ到底満足できない身体に。2002年に大阪は扇町公園内に特設された平成中村座、そこで行われた「夏祭浪花鑑」の魅力に完全にノックアウト。この公演を観たときから、これは絶対に海外に持って行ける芝居だ、もっともっと多くのひとに観てもらうべき芝居だと思っていましたので、NY公演が決定したときにはもう「行く」の一択でした。イベント感満載で楽しかったなー。浴衣を持っていったりね、当時NYにお住まいだった梶原善さんと一緒に写真撮ってもらったり。それであーたあれですよ、今年の秋の頃だかにアレがアレしてアレをやるとかいう話を小耳に挟み、俺のテンションは完全に鰻登りです。か、確実に通う!通わせてください!

これは果たして遠征なのかっつー(笑)LotR熱の集大成、ニュージーランドの北島南島くまなく経巡り、LotRの撮影で使われていたあんなとここんなとこをきゃあきゃあ言いながら見るという・・・ただそれだけの旅!でも全世界からかなりの人数が来たそうなので、そういった指輪の幽鬼はどこにでもいるということなのでしょう(うんうん)。これも英語もわからんのによくもまあ!と言った感じではあるがことLotRに関してだけは英語力がちょっぴりあがる私なのであった。それにしてもニュージーランドよいとこ一度はおいで、ホントに旅行もしやすく風景は素晴らしいし普通に観光旅行でも俄然おすすめである。むしろ普通に観光旅行に行きたい。あと北島もいいけど南島のほうがより景色がダイナミックで楽しめること請け合いです、ってなんの話だこれは。


静岡に引っ越してからは日常的な遠征はあるけど(ってなにこの矛盾する言葉)思い切って、えーい!みたいなのって最近やってないなあ。やってなくていいのか。そうか。どれもこれも「見る前に飛べ」という心持ちでやった遠征ばっかりだけど、でもそういうものはすべからく思い出深い。でもってこの楽しさがやみつきになると完全に普通の旅行は物足りなくなります(断言)。少なくとも私はそう。もともと旅行そのものが好きなわけじゃないのかもしんないね。移動は好きなんだ、でも観光向きじゃない(性格が)(どんな性格だよそれは)。青木るえかさんが言っていた、「○○と××を巡る秋の旅3泊4日間♪」なんていうのよりも、遠征先のホテルで寝っ転がりながら黙々と食べるケーキ、みたいなもののほうが断然いい、という言葉に私は心底共感する。

しかしここのところめっきりこういったエポックな遠征から遠ざかっているので、今年はひとつ海外あたり繰り出したいなあという欲求もあったりなかったりのエブリデイ。しかしこの趣味(と性格)がなかったら確実に一財産築けていたことは想像に難くなく、それでいったい何が手元に残ったかというと何も残っていませんが何か?というあたり、完全なるキリギリス人生乙といった態なのであり、一寸先は3センチとはよくいったものです。