「2人の夫とわたしの事情」

当日券で拝見。初日でした。どんな芝居でもそうですが、初日というのは独特の緊張感があっていいですね。これだけベテランがそろった舞台であってもそれは変わらず、お芝居そのものとともにその緊張感も楽しませていただきました。お互いに「様子見」だった空気がひとつ、ふたつのきっかけでほぐれていき、その波に乗るように役者が調子をあげていく・・・というのがわかるのも、芝居見の醍醐味ですね。

上演時間は1幕が45〜47分、これが3幕あって、10分ずつの休憩が2回あります。以下一応畳みつつ。
あらすじにあるように戦死したと思った夫が突然帰ってきて・・・?という、ある種シュチュエーション・コメディの体なんですが、そのすれ違い勘違いを元に話を走らせてるわけではなく、主人公ヴィクトリアをめぐる「心理的などたばた」になってるところがミソ。

主人公であるヴィクトリアを、いかにいやな女であってかついやな女でないように成立させるか、にわりと舞台の成否がかかってくるのかなあと思いました。反感だけが残ってもだめだし、共感だけが残ってもだめだし。松たか子嬢は最初こそ硬さがあったものの、1幕後半あたりから俄然波に乗り出した感じがあってぐいぐい舞台を牽引していってました。これを可愛くかつ少々のイヤミを振りまきながら、しかし最後にはたっぷりの愛嬌で和ませる、というあたりさすがだなあと。

皆さんある程度「手探り」な感じもある中で、新橋耐子さんの磐石っぷり、そして「最初から出来上がってますが何か」といった風情の段田さんの芝居は群を抜いて安定してました。段田さんはしかしほんっとうまいな!池谷のぶえさんも少ない出番ながらインパクトは充分、皆川さんもいい存在感でした。

体調不良で降板された大森さんの代役をつとめたのは猪岐英人さん。名前を聞いてもはて?という感じだったんですが声を聞いて思い出した。あの「噂の男」に出ていたあの男の子だ。やーよかったですよ。ケラさんも信頼して使っているんだろうなという感じがしました。

カーテンコールで一旦幕が降りて、もういちどあがったときに、幕の上がるタイミングが思ったより早かったのか、舞台上のキャストの皆がお互い握手しあっているところで、あわてて皆が正面を向いてあたふたとお辞儀するさまがなんともかわいらしく、ああこれも初日ならではだなあと、いいもん見させてもらいました。