「大人は、かく戦えり」

  • 新国立劇場小劇場 A2列3番
  • 作 ヤスミナ・レザ 演出 マギー

ナイロンの「神様とその他の変種」で引用されてましたよね、ということをkaiさんに教えていただいて、へーそうだったんかと思ったのが情報解禁になった去年の8月頃。果たして、開演して第一声で「ああっこれか!」と思いました。引用されているのはほんのすこしの部分だったんですけど、確かに、すごいインパクト。

上演時間80分、大竹しのぶ段田安則が演じる夫婦と秋山菜津子高橋克実が演じる夫婦がガチンコで渡り合う舞台。それぞれのバトンの渡し合いがまったくもって見事というか、この4人をきっちり交通整理している演出のマギーもすごい。

取り繕いすぎて一種異様な空気が漂う冒頭(ここをケラさんが使っていたわけですね)から、克実さん演じるアランの携帯電話での会話からだんだんと綻びが見え始め、ある出来事をきっかけに敵が味方に、味方が敵になり、入り乱れていくさまと、どんどん「身も蓋も」なくなっていく彼らの舌戦、そして最後には「草木一本残さない」とでもいうような佇まいになるところが、おかしいやら、おそろしいやら。

とにかく4人ともが抜群にうまく、時には日和見主義の頼りない夫、時にはエゴ丸出し男性至上主義、教養と良識を着込んだ鼻持ちならない妻かと思いきや、あけすけで品性をかなぐり捨てる一面もあるというように、それぞれが決して一方向ではない人物像を浮かび上がらせていてさすがでした。大竹さんの段田さんに放った啖呵にはしびれたわー(笑)

夫婦で見に行くよりも、友人同士で見に行って、それぞれ妻たるもの、夫たるもの同士で観劇後の感想を共有してみると楽しいかもしれません(笑)なにより、この上演時間にはほれぼれするね、ほんと!