「投げられやすい石」ハイバイ

七ツ寺共同スタジオお初。ひーん、ここがあの…!みたいな気持ちになると同時に、ああ、こういうまさに「小劇場」からずいぶん遠ざかっているなあなどとも思いをり。折角なのではりきって前方の席に座ったら尋常じゃないほどに足が冷えた。七ツ寺の前方席は寒い。よし覚えた。

とりあえず以下バレにつきたたみます!

「て」に引き続きハイバイを見るのは2回目。要素だけをとりあげるととてもシリアスかつヘビーなものなのに、決してそのベクトル一辺倒になってないところがすごいですし、だからこそ重い方にふれたときの感覚が倍に感じるというのはあったようにおもう。川べりのベンチで、かつての自分の彼女を驚かそうとベンチの影に隠れた佐藤が、隠れながら咳き込んでしまう、気遣う友人、彼女を驚かせることに完全に失敗しているのに「ばばばばーーん」と咳き込みながら口にする佐藤、あのシーンのたまらないおかしさ、そして哀しさ。

すべてのシーンにおいてそうですが、会話の作り込みがとにかくすごい。あれに比べたら朗々たる長台詞、なんてほうがよっぽど楽に感じるのではないかと思ってしまうほど。

佐藤を演じたのが岩井さんご自身というのはあとで知りました。いやあすごい、とくにあのカラオケボックスの中での美紀とのシーンはある種壮絶ですらあった。しかし、台詞の中にもあるが、「だめならだめって言って」と言われても「だめ」と言えなかった美紀が、佐藤の描いた絵を見た瞬間に強い拒絶反応を示したところが印象的でした。美紀にとってあの瞬間に「かつてのヒーロー」がそうでなくなったのかなあなどと思ったり。

いちばん好きなシーンは佐藤が山田に「たけのこ」の話をするところです。この3人がこうなる前、きっとこのふたりはこのことを話したにちがいない。そういう「二人だけの諒解」が感じられるシーンでした。

ぼろぼろのベンチ二つだけで数々のシーンを見せてしまう美術も素晴らしかったです。

最後に熱唱される「喝采」を聞いて、ああまるでこの物語のようだなんて思いながら、帰り道もずっと口ずさんでいました。いつものようーにまくーがあーきー こーいーのうーたうたうわたーしにー とーどいたー しらせーはー くろーいふちどりーが ありましーたー