「ノーアート・ノーライフ」NYLON100℃

10年ぶりの再演でしかもキャストがほとんどそのまんまという、こういうパターンもありそうでなかなかない。10年前は近鉄小劇場で観ました。大阪公演の初日で、カーテンコールでケラさんが出てきてくださって、大阪でダブルのカーテンコールがかかったのはじめてです、と仰っていた記憶。

10年前の初演がものすごく明確に脳裏に刻まれているシーンもあるかとおもえば、あっそういう展開になるんだっけ?と展開そのものが抜け落ちているシーンもあり、なんだか不思議な感覚でした。特に何かドラスティックな改変というのはなさってないと思うんですけど、しかしことに一幕の、あの盤石の面白さ、この安定感は初演にはなかったなあと思う。あまりにも流れるように面白くて、1幕だけでかなりの長尺なのに、ほんとおっとり時計じゃないけど40分ぐらいしか経ってない感覚でした(休憩時間に時計を見て心底驚いた)。

盤石に面白いが故に、そこかしこで顔を出す彼らの寄る辺なさや、絶対的評価がないゆえの甘えと苦悩みたいなものがチクリチクリと感じられても、メグリの台詞を借りればそれを「がんばって力を合わせて見ないように」することさえも容易く感じられたりという面もあったかなと自分の心情を振り返って思いました。でもケラさんが折り込みのなかにあった「ごあいさつ」で「笑って頂ければそれだけでも充分」と書いてくださっていたものね。というか、こういう、パンフではないケラさんのテキストが配布されるというのも珍しいですよね。

初演でとにかく鮮明に記憶にあるのは、三宅さんのオケタニと山崎さんのタイナカで、それだけこのある種「持つ者と持たざる者」の対比に自分が一番心を寄せてみていたんだなあと思いました。鮮明に覚えていて、どうなる、とわかっていても2幕終盤のオケタニの行動はぐっとくるものがあります。

初演からの続投組が殆どで、しかもナイロンの男性陣+山崎一温水洋一という客演コンビですから、ほんとスキがなかった!最初にも書いたけどいいのかこんなに盤石で、と言いたくなってしまうほどに揺るぎない仕上がりでした。あと、なんつーか1年ぶりぐらいに大倉くん見たせいかもしれないけど、もーあまりにもかわいくって舞台上の大倉くん以上に私の心がじたばたしてました。きゅんきゅんきたぜ。

2列目で拝見したのですが、途中でものすごくスイカの香りがして、それを一心不乱にむさぼる三宅さんがちょっと羨ましかったです(笑)そうそう、初演を見た時、三宅さんがそのあとのタイナカとのシーンで顔にタネをくっつけたまま台詞を言っていて、巧者山崎一さんを撃沈させていたことを思い出しました(笑)