「平成中村座十二月大歌舞伎」昼の部

「菅原伝授手習鑑」から「車引」「賀の祝」「寺子屋」。それぞれ独立した場面だけをみるのももちろん悪くないけど、やっぱり連続した物語だから、その前段と続けてみるのでは観客の思い入れも変わってくるよね…としみじみ思いました。

車引での勘太郎くんの、客席に覆い被さってくるかとおもうほどの気迫のこもった梅王丸最高だったなー。桜丸の菊之助くんも実に凛としていていい対比だった。そのあとの賀の祝、これ結局梅王と松王結局似た者同士なんだなと思わせる前半のおかしみと、だからこその悲劇の最期を遂げる桜丸の対比が切ないですよね。

で、そこからの寺子屋。あろうことか号泣してしまいました。菊之助くんの源蔵がほんとにすばらしくて、あの源蔵戻りから、小太郎の顔を見てハタ、と表情を変えるところ、目の動き、すばらしい緊迫感だった。そしてなによりも、松王が自分の心情を語る場面、「梅は飛び桜は枯るる世の中に何とて松のつれなかるらん」の歌になぞらえて語るその芝居に涙が面白いようにぼろぼろとこぼれました。お主のため、忠義のためという言葉のもとに、赤の他人の子を犠牲にしようとするその心情を、私はちゃんと腑に落ちて観られるのかなと思った部分もあったのですが、実際に目の前で起こるそのドラマを観ているとそんなことも吹っ飛んでしまいましたね。ほんとにいい芝居でした。