「11ぴきのネコ」

キャストが発表になったときから、このメンツが!長塚圭史の演出で!井上ひさしの!子どもとその付き添いのためのミュージカルを!ミュージカルを!(二度言った)やるんですってえええ!!と一部で大反響を巻き起こしたことも記憶に新しいですが、いやー楽しかった、楽しかったですし見応えありました。山内圭哉さんがパンフレットで「興行的に戦えないメンツなのに」みたいなこと仰ってましたけど、いやなんのなんの、ナイスおっさんたち(褒めてます)のナイスねこっぷりを堪能しました!

開演前から客席にねこさんたちが登場していろいろいじってくださいますので、早めの着席をおすすめします。以下バレ注意!

井上戯曲は歌が入る(ミュージカルっていうより「音楽劇」というイメージ)ので、どうしても長尺になりがちですが、長塚さんはテンポよくまとめて無理なくスピード感をあげていて、だれることなく一気に芝居を見せていた印象です。個人的には今まで観た井上戯曲の演出の中でも相当好みでした。生演奏の荻野清子さんをうまく巻き込んでいくスタイルもよかった。休日ということもあってお子様もいらしていたようですが、とてもよくウケていて笑い声を聞いているこちらも楽しかったです。

この戯曲のテアトルエコー版初演は1971年で、その後1989年にこまつ座版があるそうですが、今回長塚さんはテアトルエコー版での上演を希望したとのこと。旅に出た11ぴきのネコが、どこか牧歌的だった時代を、貧しくはあったがそれ以外のなにもかもがあった時代を経て、「今」に一気に繋げてくる展開が、まったく古びていると感じられないのが不思議であり、怖くもあります。時節のネタもそのまま使用していて現代風にアレンジをしていないのに、なにも古くない。

北村有起哉さんは「こまつ座」の出演経験も多数ありますが、ともすれば理想主義に走りすぎなキャラに見えてしまうにゃん太郎を愛嬌たっぷりに演じていらっしゃって、長い手足を振り回して一生懸命踊ったり歌ったり、誰でも惚れるわ!というようなキュートさを爆発させてました。それだけじゃなく、終幕はほぼ彼のモノローグで終わるわけですが、それまでとは違う深いトーンで、淡々とかつての仲間たちを描写していくシーンのうまさは舌を巻きました。幕切れの「どうしたことだ、この暗さは…!」という台詞も絶品。

にゃん次の中村まことさんはじめ、みんなもーかわいいかわいい、すんげえボロボロだけどかわいいかわいいと愛でたくなる愛らしさだったなあ。何故野良猫になったのか、の下りはそれぞれ見せ場ですが、粟根さんと蟹江くんのコンビも面白かったし、転球さんと大堀さんのコンビはあまりにも私のツボすぎました(笑)ああいうの大好き。一列になってのラインダンスもばらばらのチューチュートレインもたいへんよかったですかわいくて。山内さんはその中ではシニカルな役ではあるんだけど、独特の憎めない飄々とした佇まいでよかったなあ。最後のにゃん太郎とのシーンと、どこか奥底に怒りを感じさせながらあの陽気な歌を歌って立ち去っていくところは素晴らしかったです。

カーテンコールで最後に一礼するのは有起哉さんなんだけど、あれ途中まで手をぐーにしたままバイバイするのは反則だと思うのね…かわいすぎるやろーー!キー!と思わず意味のない地団駄を踏みそうになってしまいました…(笑)