中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露二月大歌舞伎

  • 鳴神

冷静にみるとものすごく破天荒で面白い話だと思うんですけど、こういう物語も取り込んじゃうのが歌舞伎の懐の深いところ、だよなあと久しぶりに拝見して思いました(笑)だって、絶間姫の「癪が…!」あたりからの展開すごすぎますよ。鳴神上人面白すぎますよ。橋之助さんの鳴神上人、いかにも高僧然とした佇まいが品よく見えるだけに、そこからの堕落ぶりがおかしいやら哀れやら。七之助くんの絶間姫も才色兼備ぶりがいかんなく発揮されててとてもよかったです。

  • 土蜘

今月の襲名興行なかではこの演目のみ初見でした。いやー!好き!こういう演目を襲名でやってくださるところとか勘九郎さんこれからもついていきます!って感じだ。というか、昼夜ともご自身が芯になる演目が舞踊というのもおもしろいですよね。
前シテの僧智籌が個人的に絶賛。花道の出の雰囲気からして異様な空気があってよかったです。いかに頼光、からがまたすばらしい。決して派手な動きではないのに場を圧する感じ、そしてそれを受ける頼光が三津五郎さんというのもぐっときます。
後シテの土蜘の精ももちろん圧倒的な迫力で、客席からため息とも歓声ともつかぬ声があがったりしてました。六代目・勘九郎の得意技が炸裂しているという感じの一幕。とてもよかったです!

  • 河内山

以前も仁左衛門さんで拝見しました。ピカレスクロマンじゃないけど、ワルがワルを懲らしめる構図っていうのは勧善懲悪とはまた違う爽快感がありますよね。松江侯を勘九郎さんがやってらっしゃって、育ちはいいけどどうしようもない!って感じの役をそれはもう見事に演じてらっさいました。きっと勘九郎さん好きだろうああいう役(決めつけ)。質見世の場でもそうでしたが、松江邸玄関先でも仁左衛門さんのきりりとした江戸弁がたいそうかっこよく、とくに最後の「馬鹿め!」は絶品。言われた松江侯の佇まいもふくめて、絵になる幕切れでございました。