「テキサス」

終演後パンフレットを買って、なにげなくぺらっと表紙をめくったらそこに
「ただいま。」
と書いてあって、なんかもう、うわわわわ!って急速に顔がにやけました。おかえり。

初演は今はなき扇町ミュージアムスクエアで拝見しました。私が観た初めての長塚作品がこれだった。もう11年前の作品で、そのあと演技者でやったやつも放送されたものも観ていないのだけど、いくつかのシーンを鮮明に覚えているし、このあと関西にきた長塚さんの作品はほとんど拝見していたところからしても、やっぱりすごくインパクトがあったんですよね。パンフの対談で湯澤さんも仰ってるけど、当時ほんと一種の祝祭的なところがあったような気がします。

思えば、その後の「みつばち」や「はたらくおとこ」にも繋がる、かつて長塚ノワールと言われたエッセンスがすごく詰まった脚本だったんだなあと改めて思いました。行き場のない閉鎖空間の中での人間の業だとか情だとかの入り乱れ。河原さんはあえて「初演と変えよう」という演出はしていない感じですよね。明確に違うのは初演は舞台の奥が窓になっていて、下手に玄関、だから「あの草」ははっきりとは見えなかったし、桂が四ツ星を撃つところも顔だけしか見えていなかった。今回はパルコということで、間口を広めにとるための改変だったのだろうなあと。

次にいう台詞がわかって観ていても、やっぱり怜奈の「天丼みたい」という台詞はいい。これぞ長塚さんの真骨頂だなと思わせる。長内ら3人の、なにもかもを茫洋にしてしまうようなあの空気感もよかった。あの3人の空気があの場所の空気なんだろうな。私はとにかく四ツ星のキャラがすごく好きで、善きものと悪しきものをまったく無理なく混在させたみたいなあの存在感は今回観てもやっぱり魅力的だなあと思わされましたです。岡田義徳くんはいい役者さんだなあ。

初演からの続投である泰志さんと伊達さん、おふたりとも素晴らしい。あの家の空気を支えていたのはこのふたりだったなーと思います。ほんともう沼田は泰志さんしか考えられないかもしれない…!初演で長塚さんが演った桂を河原さんだったんですが、あれだ、長塚さんって一見、撃たなさそうなんだよね(笑)でももう河原さんは、出てきたときからあーー撃つーーこいつ絶対撃つーーって感じが全面に出ていて、なんなのこの醸し出す裏稼業感!とおもいました。「四ツ星おまえ血ぃ出し過ぎ!」の台詞が残っててうれしかったなー。湯澤さんのやった医者の役は、東京公演では客演の人だったんだけど(河原さんがヴァンプショウ出演中だったから)大阪では総代ご自身がやってくれていて、でもって今回の湯澤さんとこれまた驚くほど役の空気感が似てるんだふたり!あと私ね、高橋和也さんを舞台で拝見したの初めてなんじゃないかと思うんですよ*1。うまいし、あの世界にがっつりはまっていて、でもどこか異種な感じもあって際立ってた。

満彦をやった門人くん、すんげえよかった。すんげえよかったです。吉本さんの千鶴子とすごくいいコンビだった。役自体もとてもいい役だけれど、なんだろう、かつて私がたくさん観てきた、誰かついてくるとかこないとかおかまいなしのパワーというようなものを端々に感じてぐっときました。

大千秋楽ということでカーテンコールで河原さんからごあいさつ。そして「地元出身の役者からひとこと」といって門人くんに振られる。あれっそうだったんだーと思いながら見ていると「愛知県豊田市出身です、えっと、まだまだ皆さん知らない方もいるかもしれませんが…って愛知県出身じゃなーい!」というまさかのノリツッコミ(笑)*2そのあと源ちゃんから「名古屋、だいじょうぶかな!反応あるかな!」って不安だったけど全然大丈夫だったぜ!ありがとうみんな!」という熱い挨拶、そして最後にふたたび「門人のホイットニーヒューストンでお別れしましょう!」という無茶ぶり総代。果敢にトライする門人くん。「…やったことないのにぃ!」いやーー愛だね、総代の愛を感じた。ついつい総代ってゆっちゃってますが。いやいや、こういう芝居を観た後は総代って呼びたくなっちまうよね。

*1:真心一座で出たときは見逃しているので

*2:「板橋出身だってこの間話したじゃないですかぁ!」とかわいらしく詰め寄っていたw