「どうしても地味」箱庭円舞曲

  • 駅前劇場 全席自由
  • 作・演出 古河貴義

日曜のソワレだけ予定がぽかっと空いてて、まーそのまんまでもよかったんですけど折角なのでなにか観るものないか、とシアガかなにかで探してて、タイトルがいいなと思って目に止まったのが箱庭円舞曲の「どうしても地味」。

久しぶりの駅前劇場でしたが、あの狭いスペースに日本家屋の一室と、ほぼ半分を庭にするという思い切った舞台美術にまず拍手。庭の部分に役者は降りないので、空間としては広くないのですが、奥行きをうまく使って広がりをもたせていて見事でした。開場したときには庭に雪が積もっているというように見えたのが実は泡で、開演時間にはぴったり溶けて春の兆し、という見せ方も凝っていたなあ。

オープニングは線香花火を見つめる二人の男の会話からで、このシーンがとにかくよかった。短い会話だけど、1本の煙草を二人が譲り合う、その中に「明日っから犯罪だからな」という何気ない一言が入って「煙草を吸うことが法律で禁じられている世界」だと観客に知らしめる。最後の1本に火をつけるその瞬間に暗転、音楽。

襖と戸の開け閉てと照明のわずかな切替だけで場面転換と時の経過を見せるのはかなり勇気がいると思いますが、セットの素晴らしさもあってうまくいっていたと思います。煙草の一件もそうですが、日中関係が険悪になり日本と中国の国交が断絶する、というような、どこかねじれた世界観が根底にあって、そこからもうひとつ物語を展開させて欲しかったなーという気もしたり。終盤の展開に欠かせない設定ではあるんですけど、展開のために必要な設定、というようになるにはもったいない感じ。

エピローグでの「因果」をめぐる話は、その前にイキウメのミッションを観ていたこともあって、おお、リンク、と一人で喜んでおりました。このシーンの笹野さん素晴らしかったなー。

二郎役の方、爺隠(じじがくれとお読みするのかしら)さんの、静かな中にも感情の起伏がきちんと伝わってくる芝居と、住職役の小野さんの軽妙さが特に印象に残りました。「出家する?」ってあんなカジュアルに言われるとおかしくてしょうがない。須貝さんもポイントポイントで的確に笑いをとっていくのがすごくツボでした。

例によって見に行くまではずるずるだらだらしてたんですけど、開始5分でやっぱりきてよかった、って思いましたし、足を運ばなきゃ手に入らないものってあるよなって思いました。あの駅前劇場にどかんと音楽が鳴り響いて暗転になるあの空間っていうのはやっぱりどこか自分の原点に近い匂いがあるなと改めて。