「インクリングズ」

インクリングズ---ルイス、トールキン、ウィリアムズとその友人たち

インクリングズ---ルイス、トールキン、ウィリアムズとその友人たち

インクリングズ」とは、「ナルニア」を書いたC.S.ルイスと「指輪物語」を書いたJ.R.R.トールキンが同時期にオックスフォード(ルイスはモードリン・カレッジ、トールキンマートン)に在籍し、木曜日の夜に開いていた「私的な文学サークル」のことです。かの「指輪物語」をトールキンはここで朗読し、賞賛を、時には批判を得て書き継いでいったという。LotRにずっぱまったときに同じ著者が書いたトールキンの評伝を読み、このサークルの存在を知ったのですが、そのサークルをより深く取り上げたのがこの本。といっても、前書きでも書かれているように中心にいるのは常にルイスで、彼の評伝のようでもあります。
なかでも、ルイスのどこか不思議な家族関係(というか、疑似家族関係*1というか)は驚きでした。兄との共依存とも言えるような結びつきも。個人的には後半の駆け足ぶりが気になりましたが、しかし「インクリングズ」に焦点を当てるのだとすればこうなってしまうのもしょうがないのかしらん。
しかし、英国の旧き良き…といっていいのかどうか、「伝統的ブロマンス」ともいうべき有り様はすごいね。そこまで奥歯を噛みしめて男同士の友情を優先させなくても…大学のフェロー資格を持つ者が一般的に妻帯を許されなかった(今は違います)とか何事かと。ルイスが「男同士の友情」を類型化して(たいへんに格調高く)語っているところとかちょっと笑ってしまいましたヨ!

*1:軍で同室になった男性の母親と親密(恋愛関係ではなく)になり、その息子の戦死後はその母親と同居し最期まで看取ったそうです。