「中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露第四十八回吉例顔見世 昼の部」

初見。廓噺もふくめて時蔵さんの芸を堪能、という一幕でしたが、白菊が親の仇をすでに討っている、そんなに何人も親の仇がいるものか、みたいな当てこすりを八重桐が口にしてからの展開が急転直下というかトンデモというか、そこで坂田蔵人が己を恥じて腹を切る、まではまあそうだよね、と思うもののそのあとわが魂魄はお前の身に宿って云々あたりから絵面的にもかなりすんごいことになっていて驚きました。あれは血を飲ませてたのか…?そしてそれはそのまま金太郎伝説につながる、ト。白菊の梅枝さんきりっと美しかった、女形でも美しいですが、彼はきっと若衆をやっても男前になるにちがいない。

  • 蝶の道行

以前拝見したと思うんですが(配役失念)、そのときも伊勢音頭といっしょにかかっていたような。どことなくファンタジックな踊りだけど、菊之助さんに七之助さん、見目麗しいおふたりでよかったです。それにしても菊之助さんを見ていると、歌舞伎の身体というのはこういうものか、と思い知らされる感じがしますよね…!あのなんともいえない柔らかさはほんとに見事だなー。

  • 伊勢音頭恋寝刃

喜助に仁左衛門さん、万野に菊五郎さんと大幹部がお付き合いくださる襲名演目。以前一度拝見しました。その時も殺しの場を楽しみにしていたんですが(すいませんすいません)、鞘が割れて万野を心ならずも斬ってしまってからの、思わず口を手で押さえて斬っただなんてなにを言う…と言ってるまにフト自分の手元を見て驚く、というあれはほんとに一種の様式美ですよね(夏祭でもそっくり同じ場面が)。勘九郎さんの貢、お紺の愛想尽かしのあたりまではなんというか、ちょっと硬い感じが強かったんだけど、抜き身の青江下坂をはっしと見てからの刀に取りつかれたような様はすごくよかったです。奥庭で障子を突き破ってきて、花道で相手に血を擦り付けられるところが一番すきだわ…(すいませんすいません)。

万野の菊五郎さん、裏のあるいやみな婆さんを淡々としかし強烈な存在感で匂わせていてすごかったです。でもって、お紺の菊之助さん!やー正直この愛想尽かしを見るためだけでもチケット代払った甲斐あったと思いました。暖簾のむこうで待っているときの、伏せた目が隙間からのぞくところからもうすばらしい。彼女がハラを決めて恋人に対して心にもない台詞を言っているということががんがん伝わってくる。武士は嫌いだと言い放つときのあの台詞、のまれた、のまれたよ!また勘九郎さんと菊之助さんでがっつり舞踊とか見たいよネ…と欲望に火がついてしまいましたとさ!