今週の清盛

第43回「忠と孝のはざまで」または「今週の重盛」。
今回ばかりは「今週の重盛」でいいんじゃないか。そう強く思うわたしである。
だって彼には今週と来週しか残されてな…

(´;ω;`)ウッ…(泣くな!)

鹿ヶ谷の隠謀における首謀者のうち、平家とも姻戚関係を結び、そもそも信西を追い落としたときに信頼側についていた成親の処分から今回は始まります。なんつっても、あの柵越しの成親の芝居よね…!なにゆえこのようなことをなさいました、という重盛のといかけにあえて目だけで見せるあの芝居!あのウソ泣きから始まって、見事なほど一貫して権力に阿ってきた成親のあの陰惨な最期。吉沢悠さん、この大河まであまり認識したことのない役者さんでしたけど、このドラマのどろどろした部分をほんとうによく体現してくださっていたと思います。おつかれさまでしたと心から言いたい…!

成親の死を知った重盛と清盛のシーン、重盛が「父の思い描いている国の形が見えなくなった」と言っているとき、わたしたちもまた清盛がなにを考えているのかまるでわからない。このシーンの清盛はまるでブラックホールのようだった。なんにも見えない。こんなにも主役の考えていることがわからないドラマなんてあるだろうか。

のちの安徳帝となる言仁の誕生で、清盛にとっては最後のピースが揃った…ということになるのか、あの「ほっとくとまたつまらんことをしでかすからこっちで監視下においてやろうぜ」っていう、決定的な一打に踏み切ろうとする清盛と平氏一門。そしてそこにたったひとり、武装をせずにやってくるやつれきった重盛。

なんかもう、ここからはほとんど呼吸するのを忘れて見ていたような気さえします。「なんとなさけないお言葉。一門の運も尽き果てたのでございましょう」から始まるかれの、最後の諌言。

かなしきかな
法皇様に忠義を尽くそうとすれば
山の頂よりもなお高き父上の恩をたちまち忘れることになります
いたましきかな
父上への不孝から逃れんとすれば
海よりも深き慈悲をくだされた法皇様への不忠となります
嗚呼
忠ならんと欲すれば孝ならず 孝ならんと欲すれば忠ならず
進退これきわまれり
かくなる上は
この重盛が首を召され候え
さすれば御所を攻め奉る父上のお供もできず
法皇様をお守りする事もできますまい
父上…

地の文として読み上げるのではなく、台詞として、それも、激情を交えた台詞として、この台詞をこのまま脚本にした作家も凄ければ、それに見事に応え、見るものを圧倒した窪田くんの演技もまたすさまじかった。すさまじかったです。

忠って、重盛たんごっしーにそんな御恩受けてたっけなあ、みたいなツッコミもたしかにあるやには思いますが、でもさー、歌舞伎とかで見ていると、その「主」への忠義ってもう、そこまでか!っていう話がほんとにたくさんあるんですよ。すごくよくしてもらえたから、とかじゃないんですよコレ。よくしてもらった量で尽くす忠義が変わる訳ではなかったとおもうんだよなあ。それがいいとか悪いとかじゃなくて、忠義とはそういうものだっていう。重盛はたしかに忠臣の鑑であったろうと思う、けれど、清盛はそもそも「そういうもの」すべてに反逆してきたひとでもあるわけでね…。

しかしとうとう、清盛もその尊い駒を喪ってしまう。その時が近づいている。かなしきかな!と叫びたいわたくしです。私の重盛たんはもう予告で「早く死なせて」とか言っていて胸が痛いです。あと乙前、あの予告のYOUが回想とか妄想とかでなかったらあいつマジ人魚の肉食ってるからほんとみんな気をつけて。

藪から棒になんなんですが、ここを読んでくれているひとって多分ドラマのほうも見てくださってる方だと思うんですけど、「読んでるけど見てない」という方がもしいらっしゃったら、この回の窪田重盛の芝居だけでもぜひ再放送でチェックしてください。ほんとに素晴らしい。この芝居をリアルタイムで体感できたことを、後々自慢の種に出来ること請け合いです。