「當る巳歳吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎六代目中村勘九郎襲名披露 夜の部」

五段目と六段目。勘平を仁左衛門さん、おかるを時蔵さんで。仁左衛門さんの勘平見るの二度目かな〜。やっぱり一つ一つのシーンの絵になる感がすごいです。ことに自分が手にかけたのが舅だったと気がつくところ、自分が撃たれるよりもつらいというその心情を身体で訴えるあの芝居の見事さ!しかし、先月休養されていたということで仁左衛門さんの体調も心配…めちゃくちゃやせてらっしゃるし。
六段目はどうしてもフラストレーションのたまってしまう話ではありますが、とはいえ見どころの連続なので集中しているとあっという間に終わってしまう感じ。おかるに最後の最後で声をかけてしまうところはやっぱりぐっとくる。
秀太郎さんのお才が、はんなりした感じの下にやり手の顔が伺えてすきな佇まいでした。

  • 口上

ご挨拶は藤十郎さんだったのですが、どうしたことでしょう、まったく言葉が出てこないという事態に…!何しろ「六代目勘九郎」から出てこなかったので、どこからか(我當さん?)小声でろくだいめ、とか、かんくろう、とか囁いて教えて差し上げるという…しかしそれでもなんというか、なんというか、いやー汗をかきました。こんなこともあるんですねえ。しかし列座の皆様方誰一人としてぴくりとも表情を変えられなかったのがすごい。
今回は團十郎さんの挨拶がすごく面白かったです。お父様とはいろいろ一緒に遊んだが、ご子息はすこぶる真面目で、みたいな話をしたあとに「ただ広尾で一人住まいをされていたと息子の海老蔵から聞いていますが、その折のエピソードはここでは割愛させていただきます」と(笑)勘九郎さん俯きながらニヤニヤされてました(笑)そして仁左衛門さんの「勘三郎さんとは兄弟のように仲よくさせていただいて、六代目勘九郎さんもまるで自分の息子のよう」とのお言葉に胸熱。

襲名演目。しかし勘九郎さんは襲名で舞踊をやる率が高い気がしますが、私が舞踊好きだからそう思うだけなのでしょうか。しかも船弁慶は前シテで静御前、後シテで平知盛の怨霊と、この世にあらざるものを演る勘九郎さんが大好きな私には猫にフリスキー並みの演目…!
静御前の動きはまったくもって見惚れるばかりなんですか、どうしたことか声がかなり壊滅的だったのが惜しい…!御園座のときも狐の高い声でちょっと苦戦してましたものねえ。
しかし知盛の霊は期待通りの、いや期待以上の素晴らしさ!花道の出から最後の引っ込みまで圧巻でした。花道での見得、とって喰われるかと思うほどこわかったよ!こええ〜こええ〜かっこええ〜〜と目をらんらんと輝かせて見入ってしまいました。長刀をものともしない動きの素早さ美しさ、そしてあの腰の安定感!これよ!これ!もうめちゃくちゃ興奮したよね…!惜しむらくは最前列だったため足の動きが見にくかったことだ…(わかってます贅沢なこと言ってるってわかってますってば)。舞踊は足の動きが見えないと魅力半減な気がしてさー。
やーしかし見応えあった。受ける團十郎さんの弁慶の大きさもあって、まさに大歌舞伎という一幕でした!