ああ無情


レ・ミゼラブル」見てきたよーい!
予告編をみたときから「期待できそう!」感がぷんぷんあったのと、公開間もなく見に行かれたシアターゴアーの皆さまが揃って高評価ということもあって年内には見たい!と思っておったのですヨ。そして先にご覧になった方のアドバイスによりがっつりタオル持参で!(泣く気満々!)

とか言ってると「思ったより…」とかいうことになりがちですがいやいやいや。
もうしこたま泣いた。
ほんと、これから行かれる方はアイメイクしないでタオルをもって出かけてください(と先輩方のアドバイスをそのまま繰り返す私)。

舞台版を見ている方にはバレも何もないと思いますがいちおう畳んでみます。

私自身はレミゼにものすごく思い入れがあるとかいうことではないんですが(そもそもミュージカル自体あまり見に行かない方でしたし)、今回はあの歌って踊れるヒュー・ジャックマンがバルジャンをやるというのと、トレイラーで見るコゼットやらファンテーヌやらマリウスやらがおお、なんかすげーイメージぴったり!というので期待はしていたんですよね〜。とはいえ東宝版を一回見たきり、かろうじてレミゼの舞台を「知ってる」程度の私ががっつりミュージカル仕立てで作られた映画に乗っていけるかしらん。とか考えていたんですがまさに杞憂に終わりました。

ミュージカルを映画にしようとするときにどうしてもこの「突然歌いだす」「なにもかも歌でやる」という舞台の文法をどうするか、というのに苦心するところってあると思うんですが、トム・フーパーはまさに剛腕でそれを真正面からやりきっているのがすごい。逆に真正面からやりきっているから(たとえ最初でひっかかったとしても)見ているうちにその世界に入り込むことができるのかもしれないです。

ファンテーヌがどん底に落ちて歌う「I Dreamed a Dream」、エポニーヌの名ナンバー「On My Own」でも涙腺がガンガンしてやられたんですが、やっぱりバリケードの昂揚からBring Him Homeの哀切、ガブローシュの死からカフェソングまでの畳みかけ、そしてあのラストでしょう。なるほど嗚咽を押さえるのにタオルが必要ってこのことか!言い伝えはまことであった!な気分。

私、民衆の歌がめちゃくちゃ好きなので、あのバルジャンの最期(ここも泣いたわー!)から、あのバリケードの光景、民衆の歌、ときたらもうどうしたらええねーん!という感じでしたね…もう一回見に行ってもいいと思うぐらいだヨ…!

映画と舞台の描き方の違う点のひとつは、やっぱりディティールを見せることができる、ということもあると思うんですよね。そしてあのバリケードの中で彼らが志半ばで命を絶たれる、その悲劇のディティールのひとつひとつが胸に迫る。もちろん舞台には映画にはない(できない)力があって、そのリアルなディティールがなくても歌だけで伝えきるんだからすごいよなと改めて思いました。

個人的な好みを言えばちょっとアップが多いかなーという感じで、もう少しソロの場面でも引きの絵があってもよかったのかなあと思ったり。とはいえ歌もなにもかも撮影時のライブ録音という迫力は満点で、息遣いまで聞えるかのような臨場感を堪能しました。ジャベールのStarsはもっと押しが強くても好きだけどなーと思いましたが、Starsを歌うときもジャベールの自殺のときも、高みでぎりぎりのところを歩く彼の足が映し出されていて、彼が強い信念を持っていると同時に裏腹の危うさを持っているようで象徴的だったなーと。あとそのまさにディティールを見せられる強みというか、ガブローシュの胸に勲章を置くシーンはほんとしてやられた…!

あとテナルディエをやったサーシャ・バロン・コーエンが私の好みドンズバでした。ああいう役者さん好きやー!東宝の舞台ではちょっと枯れた感じの人が(マダムテナルディエとの対比もあるのでしょうが)やるイメージだったんですけど、山っ気娑婆っ気満載のああいう雰囲気(しかも爛れてる)大好きですわ。

キャストを見ていても歌を聴いていても、映画に映りこむディティールを眺めていても、ちゃんとあのレミゼの世界に連れて行っていくれる、映画でありながらどこか映画をはみ出たような高揚感を届けてくれる映画でした。おすすめ!