「柿葺落四月大歌舞伎 第一部」

新しい歌舞伎座!あまり時間がなくてそれほど探検できませんでしたが、パッと見の印象が前の歌舞伎座にとても似ているので、かえってトイレの場所とかが変わっていることに戸惑うっていう。これからも末永くお世話になりたいので、またいろいろ見て回りたいな。

  • お祭り

十八世中村勘三郎に捧ぐ、と銘打たれた演目。ほんとは四月の歌舞伎座はもうちょっと早い日程で拝見する予定だったのですがそれが都合が合わなくなってしまい、そしてこの日の昼は別のチケットを取っていたんですが…やっぱり見届けたいなああ、という気持ちを捨てきれず元のチケットを放出してこの日で取り直しました。
この顔ぶれでこの演目で、どうしても勘三郎さんのことを考えずにはいられませんし、しかし考えすぎるとそっちにひっぱられすぎちゃう、というような、足場がうまくつかめないところが自分の中であったかなあ。今思うと、ちょっと引いたようなもったいない見方をしてしまったなという気がする。でも久しぶりに歌舞伎座の舞台で勘九郎さんの踊りが見られるうれしさは確かにあって、あの足先ひとつで空気がピンと張るような動き、やっぱり好きだなあと改めて。
七緒八くん、結局初日から千秋楽まで皆勤なんですね。観客の目線をあらゆるところでクギヅケにしたはもちろんですが、勘九郎さんが踊ってるときとか三津五郎さんも福助さんももはや七緒八くんしか見ていないっていう(笑)七之助さんの甲斐甲斐しい世話っぷりが微笑ましかったです。

  • 熊谷陣屋

熊谷直実吉右衛門さん、相模を玉三郎さん、義経仁左衛門さん…という、見ている間「そうだこれが大歌舞伎ってやつだよ!」と改めて思わせてくれるような顔合わせ。いやあ充実した一幕でした。情のにじませ方がまさに三者三様なのもおもしろかったです。相模がわが子の首を抱える前のほんの一瞬のためらい、その背中に、舞台が一気に母の哀切で満ちるのもすごかったですし、自分の心情を押さえていた直実が最後に花道で丸めた頭を撫でながら「夢だ…夢だ」と漏らすその言葉にまさに万感が迫るのも素晴らしかった。

出のときの花道でぐっと思い入れる場面もそうですが、直実がひとりの時にだけその性根をにじませる、それが引き立のはあの陣屋での押さえた芝居があるからで、吉右衛門さんの芸を堪能させて頂いたなあという気がしました。

藤の方が菊之助さんで、この顔ぶれのなかだとやっぱりまだ若い!(当たり前だよ)という感じはありましたけど、玉さまと居並ぶとほんとにほれぼれする美しさ。あと、義経の役ってこんなに大きかったんだな…ってことも仁左衛門さんで拝見して改めて実感したり。