ラジオ

3月の末に放送されたNHKのドラマで、あちこちで評判になっていたので気になってました。再放送を拝見。
期待に違わず、とても、とてもよかった。どんな風によかったかを縷々述べるのはあまり意味のないことのように思う。誰が見ても、見さえすればその良さをその人なりに感じられる作品だと思うし、実際にこのドラマをみて感じられる「良さ」は言葉を重ねたぐらいでは到底追いつかないもののように思うから。

震災で故郷を離れて東京で暮らす男性が瓦礫受け入れ反対の活動を行っている市民団体と会話するシーンがあるが、ツイッターでの感想をまとめられたものなどを読んでいても、そういった活動を行っている彼らに対する反応はどこか画一的だ。たしかにこのドラマの中で、彼らは心ないものの言い方やり方をする。被災した男が返す「被災地は映画館なんですかね。感情移入はするけど、関わり合いになるのはいやなんですかね」という言葉は重い。でもだからこそ「その人達と自分らは違う」と切り捨てるのはこわいことのような気がする。何も失わず、失っていないことに鈍感でいるというだけでも誰かを傷つけているってこともあるんじゃないだろうか。

東京の大学に進学する主人公の「某ちゃん」が仮設住宅の前で母親と話すシーンがある。毎朝メールちょうだい、と母親は言う。おはよう、その4文字だけ、それ以外は書いちゃだめだよ。某ちゃんは言う、私書くよ、いっぱい書く、いっぱい書いておかあさんをうらやましがらせる。「メールが負担になっちゃいけない」と母は言う。わたしやお父さんが重荷になっちゃいけない。だからおはよう、その4文字だけ、毎朝、かならず。

たまたまうちに泊まりに来ていた母と一緒にこのドラマを見ていたのだが、もしひとりで見ていたら机につっぷして大泣きしてしまっただろうと思う。

ドラマの中で流れる音楽はすべて実際に「女川さいがいFM」に携わる女子高生の「某ちゃん」が選曲したそうだ。ギャラクシー賞も受賞したことだし、きっとまたどこかで放送される機会もあるでしょう。そのときはぜひ。