「ロスト・イン・ヨンカーズ」

50周年祭り以降、三谷さんの挑戦企画が続いていますが、「桜の園」に続いて再び『演出』のみ、しかも今度はあのニール・サイモン

ニール・サイモンと三谷さんの名前からどうしてもコメディを頭に思い描いてしまいますが、いや確かに笑いもふんだんにあるんですけど、しかしコメディ、という言葉から連想する物語とはちょっと違ったなーという感じ。タイトルの「ロスト・イン・ヨンカーズ」が表すとおり、大人であれ子供であれ、ここヨンカーズで行き先を見失った迷子たちのその喪失のほうがより深く胸に響きました。

草笛光子さんが厳格な祖母を演じていて、これがもう絶品でした。すごい引力。出番としては決して多くないですし、出てくる前に「その人となり」が延々語られるというハードルの上がった状態でのお出ましですが、全身から漂う威厳と台詞回しに文字通り圧倒されます。この存在感の大きさがあるから、対祖母(または対母)でそれぞれのキャラクターもきちんと浮かび上がってくるんだろうなあ。

その祖母がここヨンカーズで喪ったものはなんだったのか、が示されるシーンはだからこそ胸に迫るものがありました。その前の中谷美紀さん演じるベラとのやりとりもとてもよかったです。

今芸能界でピンストライプのスーツを着せたら5本の指に入るほど似合うのではないかという松岡昌宏さんのルイもよかったです。「そのまんま」にも見えるけど、でもそれだけじゃない。実のところ家族への愛情が人一倍感じられる役どころでした。浅利さんと入江さんの兄弟も実年齢とはかけ離れるものの、幼い兄弟なりのかわいさと背伸びした感じがいい。長野さんの出番が少ないのは残念でしたが、出た以上は取れる駒全部取る、みたいな精神はさすが(笑)小林隆さん、中盤以降ほぼ客席通路での芝居っていう変化球でしたが、しかしあのお父さんがちゃんと帰ってきてくれてよかった。途中お父さんもしかして…みたいな雰囲気もあったので心配したおー。

三谷さん次は「国民の映画」,早くも再演ですね。しかもほぼ初演キャストが続投。楽しみです。