近鉄アート館復活祭第三夜 升毅とおかしな大阪人たち

  • 近鉄アート館 全席自由

このアート館をホームグラウンドとし、特殊な座席形態を利用して「四方囲み」の作品を次々に上演していた劇団「MOTHER」。その座長の升毅さんを中心に、わかぎえふさん、コング桑田さん、川下大洋さん、G2さん、東野ひろあきさんらのトーク牧野エミさん振付によるMOTHERのダンス、アート館で上演された舞台の過去の映像などを見る、というイベント。以下メモ書きで!

  • 開場時にはスクリーンにプラシーボデパートの映像が。ジャンキースクエアもかかってたかな?なんしか粟根さん推しだった気がするw
  • オープニングはプラシーボ・デパートのダンス。照明!音楽!そしてダンス!90年代の小劇場ってこうでした!というのを鮮烈に思い出す。そしてもちろん今でもこうしたハッタリの効いた演出が自分は何より好きなんだなーと思う
  • 登場した升さんがスキニージーンズにブーツインで、本当にあなた58歳(今年59歳)(つまりもうすぐ還暦)なの…?と震撼する。いや昔から年齢不詳、老けない老けない言われてましたけども!
  • ふっこさんたちが登場して、中央に椅子を持ってきて輪に。その時、小道具の椅子はMOTHERの「SHYBAN」で実際に使った(作った)椅子だというお話が。実は前日のアラカルトでもあの椅子、活用されてました
  • 最初に出る話が「あそこの飲み屋もうない」「あっちの店ももうない」延々飲み屋の話をするつもりですかww
  • 升さんやふっこさん、大洋さんにコングさんが揃った舞台といえば…で名前が出てきたのが1995年上演の「12人のおかしな大阪人」。名前が挙がって、うぎゃ!ってとびあがりそうになってしまいましたヨ…!個人的に1995年のベスト1の舞台でしたし、本当に大好きなんですが、G2プロデュースはこれに端を発してどんどん大きくなっていって、再演やらDVD化やら進んでいく一方で、これだけぽつーんと取り残されてて、そんなことあるわけないと思いつつも黒歴史的に扱われてるわけじゃ、ないんだよね…?って怯えていた私ですよ
  • 円卓のテーブルを12人が囲むというスタイルだったので、「そのときの位置に座ろうよ」と。川下さんの位置は私もちょっと忘れてたんですが、升さんふっこさんは覚えてた!そして「ほんとに記録用だけど」と、舞台の映像が5分ほど流れました…嗚呼、感無量とはこのことか
  • そして今だから明かされる当時の話。これは大阪初日が阪神淡路大震災の3日後で、完売御礼だった筈の客席にごそっと空席がある様子に、この中で面白おかしいコメディをやる、ということについてかなり苦しい想いもあったそうです。皆さん地元の出身だしね…。かくいう私も、もともと取っていたチケットは行くことができなくなってしまい、後日当日券で見たのでした
  • 生瀬さんは中でも参っていて、ある回で本番中に、ふっこさんの小道具のノートに「おれ もう あかん」と走り書きしたことがあったそうです。それを見てやばい、と思ったふっこさんは、隣の席の蟷螂さんにさりげなくノートを見せたけど、蟷螂さんは目に見えてあわあわしだして「こらアカン」と思ったふっこさんは次に円卓の対面に座る三上市朗さんにその事実を伝えたところ、艦長曰く「わかった。台詞は俺にまかせろ」。
  • かああっっこいいいい…!(近鉄アート館が 歓声で揺れましたヨ!)
  • 実際そのあと生瀬さんが一時退場した間、本来生瀬さんが食べるはずの牛丼をミカイチ艦長が平らげ、無事芝居を続行したとのこと
  • あの生瀬さんにもそんな時代があったのだなあという感慨と、ミカイチ艦長の漢っぷりへの感慨でなんだかじーんとしてしまいました
  • ちなみに出演者全員のサイン色紙を震災のチャリティーで販売していて(私も買った)、最初の時キムラ緑子さんは「サインなんてしたことない…!」ってびびってたのに、東京公演の最後ではもう数こなしてるので「サインしといたで〜」と慣れた風情だったそうです(笑)
  • 当時の関西小劇場の各劇団の看板役者を集めたという点でも、その脚本の面白さからいっても、なしてこれが再演されへんのか!と思っていたら、川下さんが「バラさん(松原利巳さん)はこの12人を是非再演してほしいと言ってる」。
  • ぎゃーーーーん!!!やっぱり松原さん!!!だいすき!!!!
  • 当時の面々で再演してほしいというよりも、がつっとメンバーを一新したのを見てみたいし、それに耐えうる脚本だと思っているので、ぜひぜひ実現してほしいですうううう
  • このあと、MOTHERでやっていた、ロープを交差させて洗濯ひもに見立てたシーンの再現を。その時に話に出た、どうせ四方囲みだから、絶対に見えないものが出てくる。だったらわざと見えないものをつくってやろうじゃないか、って話はすごくよかったですね。
  • 青山円形でかかった芝居がアート館でかかる、という流れが当時多くて、円形もアート館も「見えない」ことによってより観客の想像力を刺激することができる、っていう。ほんとその通りだと思うなああ。
  • 「一郎ちゃんがゆく。」がこのあとアート館でかかるわけですが、青山円形で出演していた粟根さんが、円形劇場の外周通路を叫びながら走り抜ける、その声が客席にもちゃんと聞こえるのが面白い、という話に話題が飛び、なぜか「アート館でもできるかどうかコングちょっとやってみて」とコングさんが犠牲にww
  • 何が面白かったかって、叫びながら飛び出していったコングさん(声はちゃんと移動しているのがわかるように聞こえた)が、帰ってきたとき顔が破裂しそうに赤くなってたことと、急に飛び出していったのでロビーにいた劇場スタッフがびくう!!って驚いてたって話に爆笑しました。コングさん曰く「阿倍野ハルカス最初の事件になるとこやった…」ww
  • 最後には、これからのアート館ということでオープニングに参加する各劇団の主宰が。それなりに私のお馴染みの顔もありつつなんですが、最後に出てきた「劇団からまわりえっちゃん」のコがひときわ若く、そしてひときわ空回っていて、先輩方にえいえい小突かれているさまがなんともおかしく、でもこういうバカ(ほめてます。だって忍者の格好で出てくるとかさーもう素晴らしい暴走ぶり)が関西小劇場にいるっていうのは嬉しい話ですねとおもいました

前日のアラカルトスペシャルライブもそうだったんですけど、ただ当時を懐かしむ、というだけじゃなくて、きちんと芝居の1シーン、ダンス、見せ物としての在りようみたいなところを重視されているなーと思いましたし、それがすごく嬉しかったですね。あの劇場の床がね、ほんと昔通り傷だらけで。それを見たときすごくじーんときたなあ。升さんが最初に冗談半分のように、跪いて床にキスしてましたけど、すごくその気持ちわかるよ!と思ったもんだった。

そして升さんがこの日、かつてのMOTHERで見せていたダンスシーンを、おそらく時間もない中できちんと稽古して見せてくれようとしたのは、やっぱり牧野エミさんのためだったんだろうなーと思います。プラシーボデパートの映像が途中で流れたけれど、今見ても色褪せない、感傷的になる隙さえ与えないすばらしい面白さで、抜群の存在感をあらためて実感したりしました。最後に今日の出演者を紹介したときに升さんの仰った、彼女もよろこんでいるとおもいます、という言葉は、この日の観客の皆に共通した思いだったのではないでしょうか。